
エッセンシャルワーカーでありながら、低い待遇のままだった学童保育の指導員。ユウサクさんは労働組合に加入するなどして補助金や助成事業を最大限利用して毎月の手取りを20万円近くまで引き上げたが、「まだまだ仕事の内容や重要性に見合った水準ではない」と訴える(写真:ユウサクさん提供)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
勤続10年で「手取り20万円」
ひとり親や共働きの家庭にとって、いまやなくてはならない学童保育(放課後児童クラブ)。子どもたちにとっては夕方、親が迎えに来るまでを過ごす「第2の家」でもある。しかし、そこで働く指導員の待遇はおしなべて低水準で、顔ぶれは頻繁に入れ替わる。

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ある地方都市の学童保育で働く指導員ユウサクさん(仮名、32歳)は勤続約10年。月収は手取りで20万円に届かないが、「これでもずいぶん良くなったんです」と苦笑いする。
パート指導員として働き始めたときは月収約10万円、数年後にフルタイムの正規指導員になったときは同12万円。当時はボーナスもなく、給料の遅配もあった。10人ほどの同僚らは次々と退職し、いまや自分よりも勤続年数が長いのはたったの1人だという。
指導員の中でも、ユウサクさんのような正規雇用の指導員の毎日は超が付くほど多忙だ。表向きのタイムスケジュールは朝10時に出勤、掃除やミーティングなどをこなし、午後からは子どもたちと一緒に過ごしながら仕事を終えた保護者が迎えに来るのを待つのだが、正規雇用の指導員の場合、そこに多くの事務作業や、業務の委託元である自治体や子どもたちが通う学校、地域の町内会、保護者との連携・調整といった業務が加わる。
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