「(自治体と交わす)契約書の確認、金銭の管理、保護者によるクレームの対応。地域のバザーに出店するために町内会との打ち合わせに出向くことや、子どもたちの様子を知るために学校の授業参観に足を運ぶこともあります」とユウサクさん。忙しいときに限って、出席しているはずの子どもの姿が見えないので自宅まで確認にいったり、取っ組み合いのけんかを始めた子どもたちの間の仲裁に入ったりといった不測の事態に見舞われる。
こうした責任が伴う業務は基本的に数人の正規指導員が担う。業務が過密なら正規雇用を増やせばいいのだが、財政的に難しい。結局、ユウサクさんのような正規指導員に仕事の「一極集中」が起きてしまう。
コロナ禍で負担も増えた
また、春休みや夏休みといった長期休暇中は朝7時半には開所、終日子どもたちを預かる。さらにコロナ禍で小学校が一斉休校になった2020年春には、国が学童保育は原則開所するよう求めたことから、ユウサクさんの施設では3月1日から終日利用できるよう体制を整えた。
「(コロナ禍では)おもちゃや本の消毒という仕事が加わりました。(プラスチック玩具の)レゴを毎日消毒液に浸しては乾かし、本も1冊ずつ表紙を拭くんです。中には手が荒れてしまった指導員もいましたね。小さな子どもにマスク着用を徹底させるのも骨が折れました」とユウサクさんは振り返る。
この間、「これだけ忙しくて大変で、社会的にもなくてはならない仕事なのに、この給料か」と心が折れかけたことは1度や2度ではないという。
ここで学童保育について少し説明しよう。
学童保育は共働き世帯や核家族の増加に伴い、いわゆる「かぎっ子」が社会問題化し、放課後の小学生たちの居場所を確保する必要性が高まったことから、1998年に国の事業として法制化された。
所管の厚生労働省によると、2021年の時点で全国の学童保育は約2万6900カ所、登録児童は約134万8200人と、いずれも過去最多を記録。利用申請をしながら通うことができない待機児童は約1万3400人に上る。
運営主体は自治体や社会福祉協議会のほか、企業やNPO法人といった民間事業者などさまざま。中には、保護者や地域住民らがつくる任意団体が担っているところもある。自治体を含め運営母体の財政が不安定なので、指導員は低賃金、非正規雇用率の高さに加え、一方的に解雇・雇い止めにされることも珍しくない。
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