吃音に苦しむ33歳男性が「雇い止め」に遭う理不尽 「肩をガクッと落として歩いていた」が理由?

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100人に1人の割合で存在するといわれる吃音。当事者のタカオさんはこれまで「話し方が周囲を不安にさせる」「立ち振る舞いが社会人としてなっていない」といった理不尽な理由で雇い止めにされてきた(写真:タカオさん提供)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「『休み時間に仕事をしない』『自分から残業していいか聞きに来ない』などを理由に」と雇い止めされたという33歳の男性だ。

「話し方が周囲を不安にさせる」という理由

吃音に悩むタカオさん(仮名、33歳)は、これまで何度も理不尽な雇い止めを経験してきた。吃音とは「わ、わ、わたし」などと同じ音を繰り返したり、滑らかに話せなかったりする症状のこと。タカオさんの場合はそこに、新しい環境では極度に緊張するという特性が加わる。このため、転職して最初の1、2カ月は表情のこわばりや、疲れから仕事の効率が落ちることもあるという。

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20代のころは、一般雇用枠で吃音のことを周囲に明かさずに働いていた。そのときは「話し方が周囲を不安にさせる」という理由で雇い止めにされたことがある。その後、障害者枠での就職に切り替えたものの、今度は「電話応対ができない」としてクビになった。昨年末には上司らから「(入社直後)肩をガクッと落として廊下を歩いている姿を見たという指摘が社内でたびたび出ていた。社会人としての常識的な立ち振る舞いができていない」などと言われ、またしても雇い止めになった。

タカオさんは不安と憤りが入り交じった口調でこう訴える。

「障害者雇用にしてからは、吃音や、外部からの電話応対が難しいこと、仕事に慣れるまで1、2カ月かかるといった特性については、採用時にすべて会社に伝えています。それなのにその障害特性を理由に切られてしまう。いったいこれから私はどうすればいいのか……」

自身の吃音を自覚したのは、地元の関西地方にある大学院に在籍し、就職活動をしていたとき。いざ面接に臨むと、声帯がこわばったようになり、言葉が出てこなかったのだ。やっと話せたと思ったら、異様に早口になってしまうこともあった。集団面接で自分だけほとんど話せなかったり、名前すら満足にいえなかったりもしたという。

さすがにおかしいと思い、医療機関を受診したところ先天性の吃音症と診断された。「落ち込みましたが、覚悟を決めるしかないと思いました」とタカオさんは振り返る。とはいえ、できることは、自己紹介や志望動機を繰り返し練習することくらい。

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