円安急襲の外食チェーン、明暗分ける「意外な差」 サイゼリヤは海外へのソースなどの輸出も視野

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 最新
拡大
縮小

止まらない円安に苦しむ外食業界。しかし、円安をむしろ逆手に取ろうとする外食チェーンも存在する。何が明暗を分けているのか。

急速に進む円安。外食各社が苦しむ中、サイゼリヤの社長は「円安を武器にすることも可能ではないか」と語る(撮影:今井康一)

特集「円安事変」の他の記事を読む

世界的な物流混乱に原材料高騰、深刻化する人手不足。そこに今度は円安という試練が、コロナ禍からの回復途上にある外食企業を襲っている。

年初は1ドル=115円前後で推移していた為替レートは3月以降、急速に円安が進み、4月15日には20年ぶりの安値となる126円台半ばをつけた。輸入食材やエネルギー価格の上昇につながる円安は、多くの外食企業にとってマイナス作用を及ぼし、長期化した場合のインパクトは計り知れない。

「昨年末に1ドル=115円の前提で2022年度の業績予想を作ったが、たった数カ月で120円を超えてくるとは予想だにしなかった。計画の下方修正もありうる」と、外食大手の財務担当者は肩を落とす。あるファストフードチェーンの幹部は「コロナ禍で1度値上げを行ったが、このまま円安などが長期化すれば2022年夏から秋ごろの“再値上げ”も視野に入ってきている」と打ち明ける。

「円安を武器にすることも可能」

止まる兆しの見えない円安に対し、業界で広がる悲痛な叫び。もっとも外食企業が悲観ムード一色かといえば、実はそうでもない。

「今後円安が進んでいくと、供給構造が変わると考えている。例えば中国はわれわれが(食材などを)購入する国だったが、逆にうちのカミッサリー(食品加工・流通工場)から輸出できないかというところまで考えている。どこで何を買い、何を売るのかというバランスを見直せば、円安を武器にすることも可能ではないか」

国内外で1556店舗を運営する、レストランチェーンのサイゼリヤ。同社の堀埜一成社長は1月中旬、記者会見の場でそう語っていた。

次ページ全社では為替影響をほぼ相殺
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
伊藤忠が「8時前出社」導入で出生率急上昇のナゼ
伊藤忠が「8時前出社」導入で出生率急上昇のナゼ
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
円安事変
円安の加速でも「為替介入」が困難な根本理由
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏に聞く
実は「50年ぶりの円安」を理解するためのポイント
円安影響を8つのポイントに絞りQ&A形式で解説
ニトリ、強気の「連続記録更新」を揺さぶる大試練
「36期連続増収増益」へ円安や特需一巡が打撃に
日本の「円安メリット」はもはや過去のものだ
「ミスター円」こと榊原英資・元財務官に聞く
円安が自動車部品会社に加える「トドメの一撃」
猛烈な原材料高を製品価格に転嫁させられるか
126円突破の背景は「ドル高」ではなく「円安」だ
この円安阻止に日本政府には何ができるのか
円安急襲の外食チェーン、明暗分ける「意外な差」
サイゼリヤは海外へのソースなどの輸出も視野
「本当に怖い円安」は家計の海外資金逃避で起きる
「円売り」が企業から個人にも広がれば大規模に
原油高と円安で日本の“赤字化"は不可避なのか
第一生命経済研究所の星野氏に見通しを聞く
インフレでも「財政」がよくならない不都合な真実
超低金利政策と財政出動で円安が進む悪循環
「円の独歩安」が続くといえる一目瞭然の分析
内需の低迷、資源高、通貨安に苦しむ日本経済
円安加速、日本銀行は「行くも地獄退くも地獄」
東短リサーチの加藤出社長に聞く「黒田リスク」
ECBの利上げが招くユーロ「140円台」到来はいつか
「ラガルド流」で利上げは7月、9月のどちらか
「中央銀行の債務超過」と「通貨安」は直結するのか
「中銀の財務健全性」は結果、問題は政府債務
「過剰な円安」で迫られるアベノミクスの後始末
「貧しい日本」という国難が現実化しつつある
岸田政権「資産所得の倍増計画」は何がダメなのか
英国の講演で日本の個人金融資産をアピール
「円安の行方」を占うアメリカの重要な経済指標
短期的にはドル高円安圧力が続く可能性が強い
中国「ゼロコロナ政策」の固執が招いた供給不安
日本の産業政策を再考すべき時が来ている
岸田首相はインバウンドの「全面解禁」を急げ
脱コロナの好機、円安抑止と景気浮揚に効果大
円安相場、「内外金利差の売り」はこれから本番
貿易赤字拡大と金利差拡大で年内はまだ円安進む
円安抑止へ「レパトリ減税」という真っ当な処方箋
投機でなく需給にアプローチする手段が必要だ
「円安」と「物価高」に対抗しない黒田日銀の課題
野村総合研究所の木内氏に日本経済の課題を聞く
「春になれば円安は止まる」という見立ての死角
為替介入も政府と日銀の行動が逆では迫力欠く
政府・日銀の円買い介入でも円安は止められない
低インフレからインフレへ30年ぶりレジーム転換
「半世紀ぶりの円安水準」が示す日本経済の問題
SMBC日興の森田チーフ金利ストラテジストに聞く
為替介入でも止まらぬ円安、「国民感情」悪化懸念
やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ
巷間ささやかれる「ドル暴落説」と円相場を考える
アメリカが「ドル高で困る」状況はいつ来るか
半分になった円の価値、もっと深刻な「実質価値」
「安い日本」は円安になる前から続いてきた問題
投機筋「ドル売り持ち」は潮目変化の先取りなのか
「ドル売り」=「円買い」ではないことに注意
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT
有料会員登録のご案内