自動車部品メーカーは急激な円安によるコスト高に苦しむが、すぐに製品価格に転嫁させるのは難しい。
輸出産業の自動車業界にとって、円安は業績を押し上げる「恵みの雨」となると考えるのが一般的だ。ところが、足元で急速に進む今回の円安を手放しで喜ぶ声は、業界内からほとんど聞こえてこない。
それどころか、足元の原材料高によるコスト上昇が円安によりさらに加速し、円安による押し上げ分を食いつぶしてしまうことが懸念されている。
円安により「原材料高」が深刻化
この打撃を正面から受けかねないのが、自動車部品メーカーだ。
「かねて金属や樹脂の市況が上がっていたが、さらに円安が進むようなら原材料の輸入による費用が増すことになる。先がなかなか見通せない状況だ」。苦い顔でこう語るのは、ある日産系部品メーカーの幹部だ。
部品メーカーの2021年度の決算では、半導体不足などによる客先の急減産に加え、原材料と物流費の高騰を理由として、業績予想を下方修正する企業が相次いだ。費用面ではとくに、鉄やアルミニウム、銅といった金属、樹脂やプラスチック、合成ゴムといった原油に由来する原材料コストの高騰が業績を圧迫している。
ここにロシアのウクライナ侵攻による原油高や物流混乱が拍車をかけており、「日本からアメリカへのコンテナの海上輸送費は、コロナ前の5~8倍になっている」(トヨタ系の部品メーカー)という声もある。さらに、円安によって海外から輸入する原材料のコスト高が追い打ちをかける“泣きっ面に蜂”の状態だ。
そもそも部品メーカーが受けられる円安の恩恵は、自動車メーカーよりも限定的だ。
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