「ミニシアターブーム」当時と現代の決定的な差 3人の関係者が語る若者の小規模館離れの本質

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そこはもう共存共栄していくしかないんですが、かといって興収の落ち込みをカバーできるほどではない。契約にもよりますが、配信の場合、観られた回数ではなく、一律で年間いくらという契約になっていて。そうするといくら観られたとしても決まった額しか入ってこない。アップサイドがないビジネスというのもそれはそれでしんどい。これは業界としても非常にまずいなと思っています。

渋谷HUMAXシネマほかで全国公開されている『マイライフ、ママライフ』 ©2021 「マイライフ、ママライフ」製作委員会

――そんな状況の中で、亀山監督は新作の『マイライフ、ママライフ』が公開されます。これまでの宣伝活動はどうでしたか。

亀山:やはりコロナ禍なので宣伝は苦戦していますね。インディペンデント作品の宣伝というのは、劇場前でのチラシ配りが大きかったんです。今でも少しはやらせていただける劇場もありますが、ただ「少人数でやってください」とか「ここでやってください」と場所を指定されてしまったりとか。あとこれは監督や出演者側の話になるんですが、飲み会などで前売り券を手売りできる機会もなくなってしまった。だからこの前売り券をどこで売ったらいいのか、迷っています。

大高:確かに飲み会だと断りづらいですよね。(一同笑)

亀山:こういう状態なので、この『マイライフ、ママライフ』に関しては、オンラインで鑑賞できる方法も実現できないか、検討中です。作品自体が子育てに関するお話ですし、わたしの友人たちがちょうどこのお話に出てくる登場人物と同じように、子どもを授かって育てているような状況なので。

やっぱり子どもがいると映画館に行くのは難しいんですよ。だから手の届く範囲の、身近な人たちに観てもらうためには、やはりオンラインでというのは、私の中では絶対条件でした。そういう意味で、リアルの劇場とオンラインと、両方で助け合って興行ができるというのは本当にいいなと思っています。

 リアル上映とオンライン上映を併せて実施

――それはまさに大高さんたちがやられている下北沢のミニシアター「K2」でも、『偶然と想像』をオンライン上映とリアル上映との両方で行っていましたね。

大高:ここはちょっとややこしい話なんですが、「K2」とはまた違うオンラインコミュニティでやろうとしています。「Reel」という名前のプラットフォームがあって、オンライン上映の収入を、同時公開している劇場に均等分配するという仕組みを作ったんです。その1本目が『偶然と想像』になりました。ただオンラインでチケットを買う人からすれば、一応オンラインでは観るけど、ミニシアターも支援しますということにしています。

――感触としてはいかがですか。

大高:もちろん多くの方に観ていただいてはいるんですが、ミニシアター系の映画や、作家性の強い映画というのは、映画館で観たい人が多いのかなという気もしています。

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