「ミニシアターブーム」当時と現代の決定的な差 3人の関係者が語る若者の小規模館離れの本質

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――興行収入(興収)31.2億円を記録した『カメラを止めるな!』(以下『カメ止め』)も最初は2館だけで上映されていたものが、口コミで広がり、そこからシネコンを中心にスクリーン数が大幅に増えて大ヒットにつながったという経緯があります。そこがきっかけで一時期インディーズ映画が注目を集めた時期がありました。

今でもミニシアターに行くと、作品によってはインディーズのシーンも活況だなと思うこともあるのですが、製作の面でも、興行の面でも、そうしたインディーズのシーンと、シネコンでかかるようなメジャー作品のシーンが断絶しているような気がしています。もう少しうまくクロスオーバーするような状況がもっとあってもいいのにと思うのですが。

久保浩章/くぼ・ひろあき フラッグ社長。東京大学経済学部卒業。在学中の2001年にフラッグを創業。数多くの映画ヒット作のデジタルプロモーション事業を手がけるほか、コンテンツ制作事業、ソーシャルメディアマーケティング事業などを展開し、最近は映画の配給や国際共同制作にも取り組んでいる。2016年には、映画学校ニューシネマワークショップと経営統合を行い、後進の育成にも力を入れている (筆者撮影)

久保:『カメ止め』は究極的にうまくいった例だと思いますが、今は『カメ止め』のような低予算映画か、興収何百億円を記録するような大ヒット作か、極端な例しかないように感じています。もうちょっと間の規模の映画があってもいいはずなのに。それはやはりそうした中規模の作品をブリッジするような配給会社、興行会社というのがなかなか日本だと成立してないということもあると思います。

例えば(インディーズの聖地と呼ばれる)池袋のシネマ・ロサで1週間上映した映画を、例えば興収でいうと100万円くらいでとどまっていたものを、1000万、2000万ぐらいまで広げるような機能がないというのは感じています。

中規模作品の宣伝ノウハウが抜けている

――フラッグさんも最近、ミニシアター系の洋画作品を自社配給していますが、手応えはいかがですか。

久保:もともとうちが宣伝を担当してきた作品は、洋画にしろ邦画にしろ、大作が多かったんです。だからある意味、宣伝に関しては正直、かなり自信はあったんですが、いざミニシアター系の作品を自社で配給してみると、今までのやり方が全然通用しない。世間の認知がある程度あるような作品とは、アプローチの仕方も宣伝の仕方も、マーケティングのやり方もだいぶ違う。それ用の宣伝プランを開発しないといけないというのが、僕も含めた宣伝スタッフたちの共通認識です。

おそらく興行も宣伝マーケティングも、中規模でやれる部分のノウハウが抜けているのだと思う。なぜなら一番もうからないから。

例えば映画館で1週間だけレイトショーで上映しても、報酬50万円では当然食えないですよね。作った人たちはみんなに観てもらって「良かった、楽しかった」となるかもしれないけど、ビジネスにはならない。しかしビジネスとして拡大、再生産させていく仕組みの中に、その中間層のレンジがごそっと抜けていることが大きな課題であって。これを埋めていく作業をどうするのか。そこをある程度ビジネスとして成立させることができれば、映画業界的にも、今、足りていないピースを埋める1つの試みになるかなと思っています。なかなか難しいですけどね。

大高:僕もクラウドファンディングを通じて、さまざまなクリエーターとも関わりがありますが、ミニシアター系の作品をヒットさせてもうけるというのは、現実的に難しいですね。今のところは、そこを突破できる可能性があるのは海外の映画祭なのかなと感じています。

ただやはり問題なのは、興行ですよね。日本は少なくとも商業映画に関しては、韓国のように海外マーケットに進出しようという作り方ではないですよね。それは日本のマーケットがそれなりに大きいということもあります。韓国だったらそれを海外に売り出さなければならないという焦りがあるけど、日本は鎖国してもいられてしまう状態。そこを考えていないのはもったいない気がしますよね。

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