「ミニシアターブーム」当時と現代の決定的な差 3人の関係者が語る若者の小規模館離れの本質

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――亀山監督は、世界を舞台に活躍する映画人たちにインタビューを敢行した『世界で戦うフィルムたち』(2022冬公開予定)というドキュメンタリーを制作中ですし、亀山監督自身、公開待機作の『12ヶ月のカイ』を海外映画祭に出品するなど、海外を視野に入れているクリエーターのひとりではないかと思うのですが。

亀山:実は『12ヶ月のカイ』を作った時は、そもそも映画祭に出そうとは考えていなかったんです。あの映画はヒューマンドラマの要素と、恋愛の要素、SFの要素、そして少しホラー、サスペンスの要素が入っていて。劇場に対して、この作品をなんとプレゼンしたらいいのか。自分自身がわからなくなってしまった。なので、この作品が何なのかを知るために、海外の映画祭に出してフィードバックをいただきたい、というところから始まったんです。

亀山睦実/かめやま・むつみ 映画監督、映像ディレクター。1989年生まれ、東京都葛飾区出身。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業後、2016年にクリエイティブチーム・ノアドに入社。映画、SNSドラマ、広告、テレビ、2.5次元舞台のマッピング映像演出など、幅広いメディアでの企画・演出・脚本等を担当する。主な映画・ドラマ作品は『マイライフ、ママライフ』『12ヶ月のカイ』『ソムニウム』など (筆者撮影)

――やはり海外の映画祭に出したかったということでしょうか。

亀山:国内の映画祭では、なかなかクリティカルに、この作品がどういう作品であるかという反応をいただくことは難しいなと思ったんです。もちろんそれは過去のわたしの作品が未熟だったということもあると思うのですが、面白い、面白くないで終わってしまい、もう少し分析してもらいたいな、という思いがあった。

もちろん海外に出したからといって、そういう意見がいただけるとは限らないですが、とにかく違う国の、目線が違う方々の意見を聞きたいというのもありました。英語の字幕さえ載せれば、世界中の映画祭に出せるということもあるので。

 海外進出でやはり壁になるのは英語

久保:時代的に、ある程度のセルフプロデュースは、監督であっても絶対に必要だと思うんですね。亀山監督の場合はまさにご自身でやられているんだと思うんですが、昔はそれが難しかった。でも今はスマホがあればできちゃいますからね。もちろん商業ベースだとまた話は別になってくるので、そこをちゃんとやってくれるプロデューサーが必要だと思うんですが。

やっぱり映画学校で教えていると、映画を作りたい人たちのITリテラシーが低いなと感じることが多いんですよね。あまりそういうことには興味を持たなくてもいいと思っている人が多い。でも「時代はそうじゃないんです」ということは、もうちょっと言っていかないといけないのかなと思いました。だから海外の映画祭をうまく活用するというのはすごく正しい選択だなと思うんです。やっぱり日本人は逆輸入に弱いですから。

亀山:ドキュメンタリーを作っている中で、近い世代の監督さんたちの話を聞いているんですけど、一番の壁は英語ですよね。これがドキュメンタリーの中でもメインテーマになるくらい大きかった。

久保:うちにも国際部というのがあって。海外と映画の共同制作をやる部署があるんですけど、英語ができて、かつ映画制作の知識があるスタッフというのは日本でもすごく求められていて。ずっと人材不足だと言われています。英語ができる人に映画の勉強をしてもらうのは難しいんで、やはり映画が好きな人に英語を勉強してもらったほうがいいんでしょうね。こればかりは場数を踏むしかないでしょうが。

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