前回はカレッジ制の中に生まれる「アイデアを形にする力」についてお話しした。創立800年を超えるケンブリッジ大学の学生生活の中には、ニュートンやケインズ、J.J. トムソン、ダーウィンなど、歴史的偉人が使った部屋や道具などが、さまざまな逸話と共に残されている。普段、何気なく使っている道や部屋も、彼らが使っていたものだと考えると感慨深い。さて、今回は留学生活中に触れた、伝統と現代に通じる教えについて書いていきたい。
誰も真偽を知らない通説がいっぱい
歴史ある…とはいえ、実のところケンブリッジには、本当かどうか疑わしい伝説もけっこうある。たとえば、ニュートンの出たトリニティカレッジの前には「ニュートンのリンゴの木」がある。地味ではあるが、ちょっとした観光名所だ。観光案内では、「これはあの有名なニュートンのリンゴの木の子孫だ!」と説明されていて、トリニティカレッジのホームページには、「ウールズソープ(地名)の彼の家にあったリンゴの木の子孫」と書かれている。
しかしそもそも、ニュートンがリンゴの実の落下から万有引力の法則を思いついたという説自体、本当かどうか謎なのだ。法律でも慣習法の多いイギリスらしい産物である。とはいえ、それが本当でなかったところで誰も損しないうえに地味なリンゴの木を感慨深く感じられるとなれば、この木はニュートンが万有引力を発見した基となったリンゴの木の子孫!でもよいのだろう。
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