英国名門研究所の教え「17時には家に帰れ!」

思考のない“作業”は、研究ではない!

また、ケム川(CambridgeはCam〈ケム〉川のbridge〈橋〉という意味)に架かる橋の中にひとつだけ、木造で複雑な構造を持つ通称「数学橋」がある。ケンブリッジに来て初めて聞いた話では、「ニュートンが設計した、ボルトもナットも必要ない力学的に非常に美しい橋である」という。

ある日、小舟と棒で川下りを行うパンティングというケンブリッジ伝統の遊び(ケンブリッジ生でこれができなければモグリだと言われる)を行った際に、この橋を下から見ると、ガッチリと太いボルトで締めてあった。

調べてみると、そもそもこの橋の設計はニュートンによるものではなく、アーチの接線が三角形を基本単位とする、トラス構造という形を作る幾何学的に美しい橋だという。対称性により、各部位への圧力が小さくボルトもナットも“あまり必要ではない”らしい。なるほど。「ニュートンの設計」以外は明らかな間違いではない……。この手の通説は学部やカレッジにもたくさん残っている。

カレッジには独自の伝統が受け継がれている

第1回では、オックスブリッジの特徴としてカレッジ制を挙げた。イギリスの大学は基本的にすべて国立なので、両大学もそれに順ずるが、その中にあるカレッジは私立で、ケンブリッジの31のカレッジ(オックスフォードは39)は独自の運営方針と伝統を持っている。

オックスブリッジの中で最も大きなカレッジであるケンブリッジ大のトリニティカレッジ(1546年にヘンリー8世によって設立。ニュートンなど著名人、31名のノーベル賞受賞者を輩出。自然科学に強いカレッジ)は、8億ポンド(約1400億円)分の土地を所有。そこからの収入だけで年間2000万ポンド(約35億円)にもなる。

筆者が所属していたカレッジ(Gonville and Caius college)。裕福さが、壮麗な建物からもうかがえる

このような伝統のあるカレッジの多くは、中世の王族や貴族が己の権威を示す目的で設立したもので、そのため、時を経た現在では建設不可能になってしまったような歴史的な建築が数多く見られる(もちろん現役で使われている)。

ケンブリッジの象徴のひとつであるキングスカレッジの教会(1441年にヘンリー6世によって設立)は、建設に1446年から98年もの期間が費やされており、圧倒的な存在感で人々を引き付けている。ここでは定期的にミサやクラシックコンサートが行われているが、歴史を感じさせる雰囲気とステンドグラスなどの美しい造形が、音楽に奥行きを与えてくれる。

私の所属していたGonville and Caius college(1348年設立。13名のノーベル賞受賞者を輩出。Caiusは本来Kaysだが、当時、流行のラテン語を使用)は、DNAのらせん構造を発見したフランシス・クリックを輩出しており、伝統的に生物学・医学が強い。医者などを中心とする卒業生からの寄付金により裕福なカレッジである。 

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