常見:ご著者で知ったのですが、『エムシーシスター』という雑誌もあったのですね。MCはメンズクラブの略だったとか。『オリーブ』も、当初は『ポパイ』の姉妹雑誌という位置づけだったようで。『ポパイ』にも、女性読者がいたという話が新鮮でした。
私は『ポパイ』は高校、大学の頃に読んでいて、最近はリニューアルされ年齢が関係ない本になったので今でも読んでいます。同誌は当初、西海岸テイスト。初期の『オリーブ』もそういう路線だったというのをご著書で知りました。西森さんも『オリーブ』読者だったのですよね。
『オリーブ少女』が『VERY妻』へ?
西森:『オリーブ』は中高生の頃から読んでいました。大学生になったら卒業しないといけないという圧力を勝手に感じて、読むのをやめていた時期もありましたが、会社員になったらそんなのもういいやと思って、復活しましたね。
ただ、地方在住なので、誌面で取り上げられていた東京の付属校文化は身近じゃなかったけど、酒井さんの本を読んでみて、意外と初期の付属校のイケていた『オリーブ少女』は、その後『VERY妻』に繋がっていったのかもしれないなと思いました。一般的な『元オリーブ少女』たちはナチュラルへな路線に行ったというか、ちょっと左傾化したというイメージですね。
酒井:初期の『オリーブ』は付属校のエスタブリッシュメント層がリードしていましたね。後期はナチュラル志向でした。
西森:タイトルが『オリーブの罠』なのが意味深です。前作は『ユーミンの罪』というタイトルでした。オリーブは罪ではなく、罠でした。
常見:ご著書の中では、『オリーブ』は、他の赤文字系雑誌、つまり『CanCan』『JJ』『ViVi』などと違い、モテからの解放をはかる雑誌だったと指摘されていますね。
リセエンヌ、つまりフランスの中高生の女の子たち、五月革命を歴史的背景とした、与えられた条件と環境の中で、工夫をしながらおしゃれを楽しむ女の子たちをテーマとし、「おしゃれ至上主義、文化系、非モテ非エロ」という路線、「異性の視線ばかり意識した、モテのためのファッションなんてつまらない。自分のために、自分の着たい服を着ようよ!」というメッセージ。これが実は新しかったわけですね。
ただ、ここで目覚めてしまった自意識が、あたかも罠のように彼女たちを苦しめたのではないかというのが、本書の趣旨ですよね。
西森:『JJ』など赤文字系読者とオリーブ読者のその後の違いというのが気になります。
酒井:オリーブ読者は仕事への意識が強く、『JJ』など赤文字系読者は家庭や結婚への意識が強いですね。『オリーブ』は「異性の視線を気にせずに生きていい!」という女子の自由肯定の雑誌でした。ただ、読み込むことで、失ってしまったものがある人がいるはずです。
常見:それが「罠」だったのではないかと。
酒井:私は今40代後半で、結婚をしたい時期ではなくなりました。結婚=子どもを産むための制度という側面があるので、私にはもう関係ないかな、と。
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