女にも男にも売れる『オリーブの罠』の真実 女子の生き方今昔物語 酒井順子×西森路代

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東洋経済オンラインに集いし労働者・学生・市民諸君!「若き老害」こと常見陽平である。
私は、出会ってしまった。超絶良著に。『オリーブの罠』(講談社現代新書)がその本である。著者は「負け犬」という言葉を社会現象にした、酒井順子さん(写真中央)だ。マガジンハウスが発行していた雑誌『オリーブ』をテーマにした本である。秒速で重版がかかり、都市部のオシャレ書店を中心に売れているらしい。なんでも、読者の3分の1は男性だとか。
いてもたってもいられず、対談のオファーを出した。その結果、TBSラジオ『文化系トークラジオLife』などでお馴染みの、女子事情に詳しいライター西森路代さん(写真左)も交え、女子事情、雑誌の現在過去未来がわかる鼎談が実現した。
 

赤文字系女子とオリーブ女子が送る人生

常見陽平(以下、常見):最新作『オリーブの罠』読みました。大変おもしろかったです!

酒井順子(以下、酒井):ありがとうございます。

常見:なぜ、いま『オリーブ』なのでしょう?

酒井:『オリーブ』の読者が、大人になって、懐かしむ余裕ができたのだと思います。生乾きだったものが渇ききって、懐かしむのが恥ずかしくなくなった感覚です。やっと客観視できるようになったのが今だと思います。

西森路代(以下、西森):酒井さんは、熱心なオリーブ読者であり、ご自身も高校生の頃からライターとして『オリーブ』に関わっていましたよね。その頃、他にどのような雑誌を意識していましたか?

酒井:『セブンティーン』や『ポップティーン』は読んでいなかったですね。個性がないように思ました。でも、『ギャルズライフ』は全く異なる世界として読んでいました。

(筆者註)ここで『オリーブ』について知らない読者のために、簡単にではあるが解説しておこう。『オリーブ』とは、マガジンハウス(当時は平凡出版)から1982年に男性誌『ポパイ』の女性版として創刊され、2003年に休刊になった女性誌である。
なぜ『オリーブ』に注目する必要があるか。男女雇用機会均等法が成立する以前の1980年代は、「女性は男性に見初められ、結婚して家庭に入り良妻賢母になることが、正しい幸せだ」とされていた。その時代に、異性に媚びることなく、「女性は好きな服を着て、好きな事をして、自由に生きていい」というメッセージを放つ雑誌として、多くの熱心な読者を抱えたからである。
女性たちを「『モテという戦場』から解放」」した『オリーブ』の存在は大きく、特に出版業界を初めとした文化系業界のアラフォー女性には大きな衝撃と影響を与え、彼女たちを介して、今でのオリーブの思想は、「生き続けている」のだ。
『オリーブ』に限らず、1980年代は雑誌が輝いていた時代。この『オリーブの罠』が面白いのは、1980年代のそれぞれの女性誌の標榜する「モテを選ぶか、個性を選ぶか」という立場の違いが、それを読んでいた当時の女子高生、女子大生のその後の「人生」に影響している、そしてそこに「罠」があったのかもしれないということを語っているからである。
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