グローバルM&Aによる事業拡大には世界レベルでの経営戦略を策定する仕組み作りが重要--松枝寛祐・大陽日酸会長
企業のグローバル化が不可欠の課題として叫ばれ続けている現代。積極的なM&Aにより、世界規模での経営戦略を展開している企業経営者が集結したセミナー「グローバル経営戦略フォーラム クロスボーダーM&Aと買収後経営」(主催:東洋経済新報社)が、2010年11月17日に開催された。
今回、特別講演として登壇いただいたのは、大陽日酸株式会社代表取締役会長、松枝寛祐氏。産業ガス業界において、アメリカ、アジアを中心に日本を含め14カ国での海外展開を実現し、グローバル化を一気に推し進めた氏が語る企業の歴史を、ぜひ参考にされたい。
生き残りを懸けた海外市場への進出
本日は、「グローバル企業への挑戦」という大変大きな題でお話をさせていただくわけですが、この中で、われわれがこの30年間、どういう道をたどってきたかという歴史を振り返ることで、当社のグローバル化への歩み、M&Aに当たってのいろいろな苦労、ポストM&Aでのポイント、そして今後真のグローバル企業へ脱皮するための戦略についてお伝えしたいと思います。
日本の産業界では、国際化という言葉がずっと言われてきましたが、歴史的に振り返ると1970年代までは加工貿易の時代であり、原料を輸入して製品を作り、輸出することが世界とのかかわりでした。80年代に入ると海外への生産拠点移転が始まりました。そして現在は、日本国内では少子高齢化による市場の縮小や、円高の影響があり、一方で中国をはじめとした新興国市場が極めて高速度で拡大していくといった条件の下に、グローバル化が進んできたということで、いわば「生き残りを懸けて」海外市場へ進出してきたということではないでしょうか。
幅広い分野に産業ガスを供給
ここで、当社の事業である産業ガスとはどういう事業なのかをご紹介します。当社が製造・販売する産業ガスは各種産業で幅広く使用されており、たとえば酸素は、鉄鋼の高炉や転炉で大量に使われていますし、日本の技術進歩が話題となっているロケットでは推進剤としても使われています。窒素は、不活性という特性を利用して、化学工場での保安用として、半導体、液晶などのエレクトロニクス分野では酸化防止用の雰囲気ガスとして使われています。また、鉄の加工では、レーザー切断機などに使われるガス、医療の分野では、MRI装置における液体ヘリウム、身近なところでは、携帯用酸素ボンベなどの吸入用酸素なども取り扱っています。当社の特色としては、こういったガスの製造だけではなく、ガスを製造するプラントの製作能力を持っていることです。