グローバルM&Aによる事業拡大には世界レベルでの経営戦略を策定する仕組み作りが重要--松枝寛祐・大陽日酸会長

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 このように当社は、80年代以降、アメリカではM&A、アジアでは資本参加による海外展開を進めてきたわけですが、現在の概況は、売上高が約5000億円規模で、海外売上高は約25%です。アメリカとアジアを中心に、日本を含め14カ国に事業展開しています。海外ではアメリカでの事業がいちばん大きく、10億ドルを超える段階になってきました。

一方で、世界の主要産業ガスメーカーに目を向けると、ドイツに本拠を置くLinde社の営業活動地域は100カ国以上、フランスのAir Liquide社は75カ国以上で活動しています。また、アメリカのAir Products社は40カ国以上、同じくアメリカのPraxair社は30カ国以上で展開していることに対し、われわれはまだ14カ国です。売り上げ規模で比較するとLinde社、Air Liquide社は、1兆5000億から2兆円近くの売り上げを実現しており、アメリカ勢のAir Products社、Praxair社も約1兆円の事業展開をしている中で、われわれはまだ5000億です。

■自らの目と耳と手足で探したパートナーを選ぶこと

ここで、M&A実行に当たってわれわれが注意してきたことについてお話します。まずは、明確な長期ビジョンを立てて、一貫した戦略で継続していくことの重要性です。2番目は、主体的なターゲット企業の選定。ファンドやアドバイザーから、いろいろな売り物件がありますという話が来ますが、そのような他者からの情報よりも自らの目と耳と手足で探した買収先、あるいは合弁先のパートナーを選ぶことが重要だと思います。3番目は各国の状況に即した柔軟な対応です。それぞれの国によって宗教も哲学も法律も文化も商慣習も異なりますし、特にアジアにおいては、アメリカのようにM&A市場も育っておらず、また外資規制の問題もあったわけなので、ローカルパートナーの存在が不可欠でした。ローカルパートナーとやっていくうえで、それぞれの状況で機敏な対応を行い、当社がマジョリティを獲得し、経営権を把握していくことがポイントとなるため、柔軟な対応が求められるでしょう。

明確な長期ビジョンと一貫した戦略

1番目の長期的なビジョンについて、われわれが設定したことの1つは、対象地域を北米とアジアに限定したことです。われわれの2倍、4倍の規模の欧米メーカーがひしめく海外マーケットで、全世界を対象に進出しようとしても当然無理があろうということで、前掲した対象の地域で展開していくことを基本としました。

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