不調に終わった菅・小沢会談で思い出す中曽根・田中会談

不調に終わった菅・小沢会談で思い出す中曽根・田中会談

塩田潮

 12月20日、衆議院政治倫理審査会出席問題をめぐって、菅首相と小沢民主党元代表が会談した。双方の主張は対立していたが、やはり不調に終わった。

 菅・小沢会談で、1983年10月28日の中曽根・田中会談を思い出した。12日にロッキード事件第一審判決で田中元首相が有罪となり、野党は議員辞職を要求した。事態打開のため、両者の会談が行われた。27年前の田中元首相は「有罪判決、議員辞職要求」を背負っていたが、小沢氏が抱える事情は「まもなく強制起訴、政倫審出席要求」だ。

 事件の中身も政治情勢も異なっているが、政治倫理をめぐる問題での首相と政界最大実力者の直接会談という点は共通している。

 今回の菅・小沢会談も、現段階では会話の内容は不明だが、27年前の中曽根・田中会談も何が話し合われたかはいまも明らかになっていない。

 当時の中曽根首相は「時局の重大性」を説明し、田中元首相は終了後、「自重自戒」という談話を発表した。就任10ヵ月だった中曽根首相は中央突破作戦を敢行し、1ヵ月後に衆議院を解散するが、総選挙勝利と田中元首相の復権のための一時的な議員辞職を要望する手紙を、田中元首相の秘書だった故佐藤昭子さんに届けた。田中元首相に手紙を見せるかどうかは任せると書き添えてあり、佐藤さんは「見せない」と返事を書いたという(佐藤昭子著『私の田中角栄日記』)。

 中曽根・田中会談には、国民の目をくらます大芝居、派閥政治下の茶番劇という批判が噴出し、自民党は総選挙で敗北する。中曽根首相は辛うじて政権維持を果たしたが、「田中支配」という鎖を引きずり続けた。だが、一方で、闇将軍のパワーを最小限に押さえ込み、挙党態勢を築いて自民党長期政権の基盤を維持した点を評価する見方もあった。

 27年後の菅・小沢会談で問われたのも、「小沢支配」の阻止か容認か、挙党態勢の是非といった問題だ。菅首相も27年前の中曽根首相と同様に、政権基盤は脆弱で、延命に懸命だ。

 菅首相の場合は、ねじれを背負い、解散カードは使用不可だが、苦境を乗り切るポイントは、首相としての達成目標の明示、政策実現の構想力と戦略的思考、そのための説得力である。一発勝負の差しの会談で、それらを駆使して成果を出せたかどうか。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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