サバがマグロの「代理母」になる? 『サバからマグロが産まれる!?』を読む

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日本人が大好きなマグロ。絶滅の危機に、サバは代理母となってくれるのでしょうか?(写真:marika / Imasia)

サバがマグロを産むとはなんとも信じがたいが、東京海洋大学の著者らはすでに、ヤマメにニジマスを産ませることに成功している。結論から言ってしまえば、まだサバからマグロは生まれていない。それでも著者は、サバにマグロを産ませる研究は頂上までの道程の9合目に達しているという。この研究が発展すれば、人類と環境の関わり方はガラリと変わってしまうかもしれない。

困難に立ち向かう研究者の姿に心揺さぶられる

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本書はわずか115ページの中に、サバにマグロを産ませるという奇抜なアイデアを思いついたきっかけから、生物を扱う研究に伴う困難や失敗、地道な苦労を積み重ねた末にあるエウレカの瞬間まで、サイエンスの面白さが凝縮されている。最先端のバイオテクノロジーに基づく研究成果に驚き、あなたの生命観さえ揺さぶられるはずだ。なにしろ、この研究から「精子のもとになる細胞から卵が出来たり、卵のもとになる細胞から精子が」することまで明らかになっているのだ。

本書冒頭でも描写されるように、クロマグロの現状は危機的なものだ。2014年11月には国際自然保護連合の「レッドリスト」で、太平洋クロマグロが「絶滅の危険が増大している種」である絶滅危惧2類に指定されている。大西洋クロマグロの状況はさらに厳しく、北西大西洋クロマグロは最も危険度の高い絶滅危惧種1A類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)である。この危機の原因は、需要の増大に伴う過剰漁獲にある。われわれの胃袋は、ウナギに続いてマグロまでも飲み込んでしまうのだろうか。

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