これは私がまだぴちぴちの新人だった頃のお話です。
ロンドンから偉い人が日本に出張にやってきて、部署全員で会食をすることになりました。この偉い人がどのぐらい偉い人かというと、よくわかりません。
ロイターニュースには出ない程度のスーパー偉い人ということだけわかりました。
新人の私はこの会食のアレンジをすることになったのです。
接待の場所決めって本当に嫌ですよね。特に偉い人がかかわってくると、本当にもめますよね。
そのときもすき焼きかしゃぶしゃぶかで大いにもめましたが、前回の接待担当だった先輩の
「前回、彼が日本に来たときはすき焼きを食べに行ったから、今回はしゃぶしゃぶがいい」
という一言によって、しゃぶしゃぶに決まりました。
この先輩、実はこの偉い人のお気に入りだったわけでして……。この後の接待しゃぶしゃぶで衝撃の展開が待ち受けていたのです……。
さてはて、偉い人との接待が東京某所のラグジュアリーなしゃぶしゃぶ屋さんで始まりました。しゃぶしゃぶというのはあまりメジャーではないのでしょうか? その偉い人はしゃぶしゃぶを食べるのが初めてだったらしく、鍋を目の前にして食べ方がわかりません。
すると先輩、すくっと立ち上がり、彼の隣に座ると、
「しゃぶしゃぶって言うのは、こうやって薄いお肉を湯がいて、食べるんですよ」
と実演しながら食べ方を教え始めました。
彼女は帰国子女なので、イギリス人相手でも英語には困りません。流暢な英語で彼女は続けます。
「こうやってお肉の色が変わったら、このタレにつけて……はい、あーん♡」
と突然、先輩は偉い人にあーんさせながらお肉を食べさせ始めたのです!
無料会員登録はこちら
ログインはこちら