《プロに聞く!人事労務Q&A》退職した従業員が加盟した合同労組と交渉する必要はありますか?
回答者:石澤経営労務管理事務所 石澤清貴
近年、解雇やセクハラ・パワハラ等の個別の労働紛争が増加する中、在職中または退職した従業員が、会社とはまったく関係のない一般合同労働組合(以下、合同労組という)に駆け込み、そこから団体交渉の申し込みを受けることが多くなっています。
貴社の場合、企業内労働組合があり、ユニオンショップ協定(会社に雇用された者は必ずその労働組合に加入し、管理職以外で加入しない場合には解雇する旨を訳する協定)を締結しているとのこと。しかし、この場合であっても、現従業員または従業員であった者が合同労組に加入してしまった場合には、合同労組には団体交渉権があることになります。これを拒否すると労働組合法上の不当労働行為とされるおそれがあります。
なお、合同労組には、労働組合法上の資格要件を満たしているものから実態のわからないものまでいろいろあります。合同労組が団体交渉を申し入れてきた場合には、まず、その組合が労働組合法上、適法な労働組合であるか否かについて、組合登記簿や労働委員会の資格審査証明書の開示を求める対応も必要です。
また、退職した者は、すでに会社との間の雇用関係は終了しているので関係ないということにはなりません。解雇や雇い止め等をめぐる労働契約関係の継続の有無(不当解雇として争っている場合等)や退職事由がセクハラ・パワハラ等在職中に起こった問題による場合、未払い賃金がある場合などで争いがある場合には,その範囲内において,「雇用する労働者」であると解されるからです。
団体交渉の申し入れは,労働関係終了後「社会通念上合理的な期間」になされる必要があり「著しく時機に遅れた」申入れには,使用者は応じる義務がないとされています。「社会通念上合理的な期間」については、諸般の事情を考慮して判断され一概にはいえません。たとえば,日立メディコ事件・中労委命令1985年11月13日では契約更新拒絶後10年を経て組合に加入し,その4カ月後になされた団交申し入れを「合理的な期間」外とし,一方,日本鋼管鶴見造船所事件・最三小判1986年7月15日は解雇後6年10カ月と4年5カ月経過した従業員についての団交申し入れを「期間」内としています。