《プロに聞く!人事労務Q&A》退職した従業員が加盟した合同労組と交渉する必要はありますか?

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ところで、団体交渉に応じたからといって合同労組の要求をのむということではありませんので、団体交渉に当たっては、その交渉のルール(場所、出席者、交渉に出席する人数等)を相互に話し合って決めることです。こうしたやり取りは、必ずしも合同労組と面談して決める必要はなく、相互に文書のやり取り(要求書または回答書)で行うのも方法の1つです。

出席者については、相手側は代表取締役の出席を求めてくることが多くありますが、必ずしも代表取締役が出席する必要はありません。労働条件等その交渉案件について一定の権限を有している役員や人事・総務部長でも差し支えありません。

また、交渉のすべての事項についてその場で決定する必要はなく、特に交渉過程の中で突然合同労組側から出てきた要求などは、次回までに検討させていただくということで何ら差し支えありません。交渉の内容については、記録しておくことが必要でしょう。2名以上の者が団体交渉に出席して、そのうちの1名が交渉の内容をできるだけ詳細に記録するようにします。そすることで、言ったまたは言わないということにならないようにします。

なお、実際の交渉の中で、大切なことは、会社側には誠実に協議・交渉をする法的義務、いわゆる誠実団交義務がありますが、それは「労働組合の主張に対して合意達成の可能性を模索する義務」にとどまるものであり、相手方の要求に理由なく同意する義務ではありません。しがたって、主張すべき点は主張し、不当な要求に対しては場合によっては労働委員会への斡旋の申し立てや労働審判も受けて立つぐらいの覚悟も必要な場合もあります。

石澤清貴(いしざわ・きよたか)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒。日本法令(人事・労務系法律出版社)を経て石澤経営労務管理事務所を開設。
商工会議所年金教育センター専門委員。東京都福祉サービス第三者評価者。特に労務問題、社内諸規定の整備、人事・賃金制度の構築等に特化して業務を行う。労務問題に関するトラブル解決セミナーなどでの講演や執筆多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

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