クラウドの導入は、IT資産のオフバランス化にとどめず成長戦略としての視点を

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想定外の事態への対応策も

さらに、データの管理の問題もある。導入前には、データの入力部分に意識が集中しがちだが、忘れてならないのはデータを取り出すときのイグジット・コストだ。アップロードに比べ、ダウンロードは料金がハネ上がる傾向がある。ある自治体では、データの持ち出し料として億円単位の額を請求された。

データのフォーマットは企業秘密になっていることが多く、テキストファイルなど一般的なデータに変換するためには、それだけコストがかかる。データは単独で成立するものではない点も問題を複雑にする。

データベースの構造上、1種類のデータが単独で存在することはない。さまざまな他のデータと関連付けられており、そういった構造を外した状態でデータを受け取ることになる。そのため、データを取り出した後、ほかのクラウド業者に移行しようとしても、すぐにはできない。

仮想環境下で同じサーバーに同居する他企業で発生した法的トラブルによって、サーバー、あるいはデータセンター自体が差し押さえられるというリスクも起こりうる。こういった不測の事態への対策を検討しておく必要もある。

一方、丸投げにできるからといって、技術的な側面を完全にブラックボックス化してしまうのも好ましくない。自社でシステムを組めなくても、どういった構造になっているのか、どういったOSを利用しているのかといった基本的なことは理解しておく必要がある。

ことに商用で提供されているソフトウエアはサービス停止のリスクがある。オープンソースソフトウエア(OSS)といわれる、無料で提供されるソフトウエアを、必要に応じて取り入れることは悪いことではない。

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