優等生で居続けたいと無理重ねるのがしんどい訳 水木しげるが作中に遺した「エリート病」への皮肉
「優等生になったのが悪かったのねえ」
「一番病、あるいはエリート病、あるいは征服病といってもいいかもしれません」
この一言を発したのは、『水木しげる漫画大全集』第70巻、「水木氏のメルヘン」の表紙にも取り上げられている名作、『一番病』の主人公・幸吉である。
幸吉の師匠である「江戸一番のカンオケ屋」・徳兵ヱは、嫉妬心と競争心が異様に強く、寺社奉行から「カンオケ賞」の審査員を依頼されたことで、自分が日本で一番のカンオケ職人だと、自負の笑い声をあげる。
幸吉が、「先生がいい年をして、ああして何でも一番になることを好まれるのはいつ頃からなんですか」と聞くと、馬面の奥方がこう答える。
「なんでも寺子屋で先生にほめられたのが病みつきになって、くそ勉強したらしいのよ。そうしたらなんかの間違いで優等生になったのが悪かったのねえ。それからなんでも優等生でないと気がすまなくなったらしいのよ」


















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