優等生で居続けたいと無理重ねるのがしんどい訳 水木しげるが作中に遺した「エリート病」への皮肉

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「カンオケ評論家」が登場し、「大坂でカンオケ博覧会」が開かれることになったりするのも、当時のマンガの地位の向上を示している。さらに、座棺専門の徳兵ヱが、「寝棺なんて南蛮の影響だよ」と言うのは、アメコミの影響を批判する日本のマンガ家をイメージしているのかもしれない。

自分も「一番病」にかかっていないか?

医療界にも「一番病」を患う者は多く、特に偏差値の高い大学を出た者に多い気がする。

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ある大学の教授は、自分の専門分野ですべての治療の症例数を日本一にすべく、無理に適応のない患者に特殊な治療を行って、死亡させた。それを異常死として届け出なかったことで、一時、問題になった。当の教授を知る人に聞くと、彼は子どものころから常に一番の成績で、これまで挫折を知らずに来たので、そんな無理をしたのだろうとのことだった(インサイダーなので、詳しく書けないのがつらいところ)。

私自身も、何か必死に努力をしているとき、ふと自分は「一番病」ではないかと疑うことがある。子どものときにほめられたのが病みつきになって、懸命に歯を食いしばって、努力を重ねているが、ほんとうは空しいことなのに、それに気づかず……。

出世のみならず、金儲けでもスポーツでも芸術でもお笑いでも、なれるものならだれしも一番になりたいだろう。なまじ手が届きそうだと、頑張ってしまう。それが〝ビョーキ〟につながる。

ものは考えようだが、もともと一番に縁のない人のほうが、健全で気楽に生きられるのかもしれない。

久坂部 羊 作家

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くさかべ よう / You Kusakabe

1955(昭和30)年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒。外科医、麻酔科医を経て、外務省に入省。在外公館にて医務官を務めた。2003(平成15)年、『廃用身』で作家デビュー。2014年、『悪医』で日本医療小説大賞を受賞。他に『破裂』『無痛』『神の手』『嗤う名医』『芥川症』『老父よ、帰れ』『オカシナ記念病院』『怖い患者』『生かさず、殺さず』などの著書がある。『ブラック・ジャックは遠かった』『カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座』などエッセイも手がけている。

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