「親ガチャ」と嘆く人に欠けた社会契約という視点 平等で助け合える社会を可能にする3つの原則

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既存の社会契約の亀裂がだれの目にも明らかになったのは、コロナウイルスの世界的流行が起こり、社会のどの集団がもっとも傷を受けやすいかがあらわになったときだ。

多くの国々でこのところ起きている政治的騒動は、私たちがたがいに何を負っているかを見直さなかった場合に待ち受けている、未来のシナリオの予兆にすぎない。

私たちがそれぞれの期待を再調整し、新しい機会を提供し、変化への対応を支えることができれば、新しいコンセンサスがきっと生まれ、私たちとその子孫は未来においても栄えることができるだろう。

新しい社会契約の3つの原則

21世紀の要求に合致した新しい社会契約とは、どんなものなのだろうか?私は、新しい社会契約の形成には3つの大きな原則があると信じている。

第1に、ふつうの生活を送るうえで最低限必要なものを万人が保証されるべきだということ。この「最低限のもの」には基本的医療や教育や、仕事に関連する福利厚生や、貧困や老いから身を守るための年金などが含まれているが、その程度は、社会がどれだけお金を出せるかに左右される。

第2に、万人がそれぞれ最大限の貢献をすること。また、最大の貢献をするために、生涯を通して教育を受けられるようにしたり、定年を引き上げたり、育児の公的支援を整えて女性が外で働きやすくしたりすることだ。

第3に、病気や失業や老いなどの一定のリスクに関する最低限の保護の提供を、個人や家族や雇用主だけに負わせるのではなく、社会でもっと分担するようにすることだ。

今日の経済を動かしている強大な力──グローバル化、資本主義、人口統計的な変化、技術革新、環境資源の搾取など──は巨大な物質的進歩をもたらしたが、それらの負の影響を私たちの社会契約はうまく御せなかった。

社会契約がもしちがう形であれば、万人のためにもっといい機会のあり方をつくる一方、利益の確保もできたのではないか? そして、落胆や怒りに動かされた政治のネガティブな循環を断ち切ることも、もしかしたら可能だったかもしれない。

私にとって社会契約という言葉が意味するのは、技術官僚や政策官僚だけに関わりのある抽象的な活動ではない。教育制度をいかに組織するか、医療の財源をどうするか、失業者にどう対処するかなどの政策決定は万人に多大な影響をもたらす。

こうした視点がこれらの大切な問題を身近なものにしてくれれば、そして私たちみながこれらの重大なものごとについて意見をもてるように、背中を押してくれれば幸いである。

(翻訳:森内薫)

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