「親ガチャ」と嘆く人に欠けた社会契約という視点 平等で助け合える社会を可能にする3つの原則

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すべての社会は、何かのものごとを個人に委ね、別の何かを集団的に決定するよう選択している。そうした集団的機構のはたらきをつかさどる規範やルールを私は社会契約と呼ぶが、私はそれこそが、人がどんな人生を送るかを左右する最重要な要素の1つだと信じている。

その重要性ゆえ、そして大半の人は自分の生きる社会を簡単には去れないゆえ、社会契約には大多数の同意が必要であり、また、環境の変化に伴って定期的な再検証を必要とする。

機能不全に陥った社会の「システム」

私たちの生きるこの時代、多くの社会で人々は失望を感じている。人々は社会契約や、社会契約によってもたらされる生活に不満を抱いている──過去50年のあいだに世界は物質的に大きな発展を遂げ、巨大な利益をあげているにもかかわらず。

調査によれば、アメリカでも欧州でも、中国でもインドでも、そして多くの開発途上国でも5人に4人は、自分たちにとって「システム」がうまく機能していないと考えている。多くの先進国において大半の人々はもはや、自分の子どもが自分たちよりも豊かな生活を送れるとは思っていない。

途上国では往々にして、人々が教育や医療や仕事を切望する一方で、社会がそれらを十分提供できていない。そして世界中で労働者たちが、スキルの欠如や自動化によって食いぶちを失うことを恐れている。

不満はさまざまな形であらわれる。田舎や小さな町の人々は「地方を犠牲にして不当に多いリソースが都会に流れたり、都会が何かと注目されたりする」と不満を言う。

いくつかの国々ではもともと住んでいた人々が、「あとから来た連中のせいで社会が変わった」「対価を支払ってもいない移住者らが利益を受けている」と不平を口にする。かつて支配的だった民族のメンバーは、それ以外の民族が同等の待遇を要求することに怒りを覚えたりする。

女性が新たに力をつけることやクオータ制などの政策によって、自分が不利益を被るのではないかとおびえる男性もいる。

若者の中には、高齢者が医療や年金などで財源をますます食いつぶす一方、自分たちは負債や環境破壊などの負の遺産ばかりを押しつけられていると声高に言う人が増えている。年配の人間は、自分たちが過去に行った犠牲に対して若い世代が十分感謝していないと不満を抱いている。

社会契約は、私たちが社会の中でたがいに何を期待できるかを定義する。テクノロジーの進化、女性の役割の変化、高齢化、そして環境への懸念などが意味しているのは、これまでの経済的・社会的モデルが圧力をかけられているということだ。

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