老後生活資金2000万円問題
2019年6月に「老後生活に2000万円の貯蓄が必要」という金融庁・金融審議会の報告書が発表されて、大きな関心を集めた。
ところで、報告書は極めて奇妙な経過をたどった。
まず野党が「年金だけで老後生活を送れると思っていたが、100年安心年金というのはウソだったのか?」と、政府を追及した。
ところが、この追及は見当違いである。なぜなら、政府は、「年金だけで老後生活を送れる」とは約束していないからだ。
政府が約束してきたのは、つぎのことだ。
厚生年金については、モデル世帯の所得代替率を、ほぼ50%に維持する(注)。2025年までに支給開始年齢を65歳に引き上げる。年金保険料率は、現在以上の引き上げは行わない。
「100年安心」とは、「このような内容の年金制度を100年維持できる」ということだ。
このことと、「老後に備えて一定の蓄えが必要」ということは、なんら矛盾しない。
だから政府は、野党の追及に対して、「それは見当違いだ」と言えばよかったのだ。
(注)「所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)での年金額が、現役モデル世帯の手取り収入額(ボーナス込み)と比較して、どのくらいの割合かを示す指標。
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