支給開始年齢を70歳にまで引き上げる措置が取られる可能性は、十分ある。2年で1歳ずつ引き上げ、10年間かけて行うだろう。仮に、65歳への引上げが完了する2025年から開始するなら、2035年に完了する。
これは、老後に向けての必要資金に大きな影響を与える。
上記金融庁の試算で、収入のうち、社会保障給付は月19.2万円(230万円)だ。5年間では約1150万円だ。
1960年に生まれた人は、2025年に65歳となり、年金を受けられる。したがって、1960年以前に生まれた人は、上記措置の影響を受けず、65歳から年金を受給する。
2035年で70歳となる人は、1965年に生まれた人だ。70歳支給開始になるのが2035年であるとすれば、1965年以降に生まれた人は、70歳にならないと年金を受給できないことになる。
このように、70歳支給開始の影響をフルに受けるのは、1965年以降に生まれた人々だ。今年56歳以下だ。
それらの人々は、単純に考えれば、5年間分の年金額に相当する額を2000万円に加えて、自分で用意しなければならない。
65歳時点で約3150万円の蓄積が必要
したがって、標準的な場合には、65歳の時点で、約3150万円の蓄積が必要ということになる。
高齢者世帯の貯蓄保有額を参照すると、これはきわめて厳しい状況だ。
厚生労働省、2019年国民生活基礎調査によれば、貯蓄額が3000万円を超えている世帯は、全世帯で8.9%、高齢者世帯で10.8%でしかない。
したがって、実に約9割の人々が老後生活資金を賄えないことになる。生活保護の支えが必要な人も出てくるだろう。
以上で述べた問題がありうることを考えて、将来に向かう年金制度を用意するのは、現在世代の責任だ。われわれは未来の世代に対する責任を果たしているとはいえない。
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