日本の政治家が社会保障の議論から逃げている訳 負担4割増えるのに選挙の争点にもなっていない

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最も重要な再分配制度である社会保障が選挙の争点になっていない(写真:kelly marken/PIXTA)
人口高齢化によって社会保障給付が増え、労働年齢人口の1人当たり社会保障負担を今後20年間で現在から4割以上引き上げる必要がある。しかし、そのための措置は、ほとんどなされていない。総選挙でもまったく議論されなかった。日本の政治家は、将来に対する責任を放棄している。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第55回。

社会保障給付費はGDPの4分の1程度

総選挙で、各党とも財政支出による給付や減税を掲げた。こうした「人気取り政策」が分配政策であるとされる半面で、最も重要な再分配制度である社会保障が抱える深刻な問題は、置き去りにされた。

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分配を問題としながら社会保障を争点としない理由は明らかだ。

議論すべき点が、負担の引き上げか、給付の削減に関わるものばかりだからだ。つまり、どの政党も触れたくない問題なのである。

しかし、だからといって先延ばしすれば、より拡大した形となって将来の日本人に襲いかかることは間違いない。

この問題が議論されないことは、与野党ともに、将来に対する責任を放棄していることを意味する。

社会保障制度を通じて、どの程度の規模の再分配が行われているだろうか。

社会保障給付統計によると、2019年度の社会保障給付は、年金55.4兆円、医療40.7兆円、福祉(介護を含む)27.7兆円、合計で123.9兆円だ。これはGDPの22.2%にも相当するきわめて巨額のものだ。

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