日本の政治家が社会保障の議論から逃げている訳 負担4割増えるのに選挙の争点にもなっていない

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受給者はさまざまな年齢層にまたがるが、主として65歳以上の高齢者だ。

2019年の65歳以上人口は3592万人なので、平均すれば年金は1人当たり154万円になる(ただし65歳未満の年金受給者もいるので、実際の平均年金額はこれより少ない)。社会保障給付合計では、2人で平均690万円だ。これは、2人以上の勤労者世帯の2019年の実収入580万円よりかなり多い。

年金だけで生計を立てている高齢者世帯も多い。高齢者の生活は、社会保障制度がなければ成り立たない。

一方、負担は、主として社会保険料と税だ。社会保険料負担は、本人負担分だけではなく雇用主負担分もある。これらは、主として労働年齢人口が負担する。なお、このほかに積立金の収入もあるが、ごく少ない。

したがって、社会保障制度を通じて、労働年齢人口から高齢者へ、きわめて巨額の再分配が行われていることになる。

社会保障給付費は、過去20年で約6割増えた

2000年から2019年までの20年間に、社会保障給付は、58.1%増加した。

他方で、65歳以上人口は、この間に2200万人から3592万人まで、63.2%増加した。

両者の伸び率は、ほぼ同程度だ(社会保障給付の伸び率のほうが若干低いのは、年金支給開始年齢の引き上げなどが行われたためだと考えられる)。

したがって、負担もそれだけ増加した。消費税率の引き上げ、年金保険料率の引き上げ、健康保険料率や介護保険料率の引き上げなどが行われたのだ。

15~64歳人口は、この間に8622万人から7462万人へと0.865倍になった(13.5%の減少)。したがって、1人当たりで見れば、社会保障負担は、1.58÷0.865=1.83倍になったことになる。

この期間に日本の賃金がほとんど上がらなかったことが最近問題とされているが、それだけでなく、負担がこのように増えたのだ。

今後を見ると、2040年まで高齢者人口は増え続ける。したがって、社会保障給付も、それを支えるための負担も増える。

次ページ社会保障給付と負担は2040年までにどう変化する?
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