賃金格差は、単純な再分配政策では解決できない
岸田内閣は、所得再分配を経済政策の柱にしている。
所得格差を生む原因としては、さまざまなものがある。
第1に、相続等によって生じる資産保有額の違いは、所得格差の大きな原因だ。
第2に、何らかの理由で働くことができず、収入の途を断たれている人々がいる。
こうしたことを原因として生じる所得格差に対しては、税制や財政支出での対応が必要だ。
所得格差を生む第3の原因は、賃金格差だ。
後述するように、現在の日本では、大企業と零細企業の間に大きな賃金格差がある。あるいは、正規雇用者と非正規雇用者の間に賃金格差がある。
所得格差の大部分は、こうした賃金格差によって生じている。
したがって、分配を重視するのであれば、賃金格差の問題を避けて通ることはできない。賃金格差是正のための政策は、分配政策のなかで中心的な比重を占めるべきものだ。
ところで、賃金格差については、事後的な再分配政策をいくら手厚く行っても、問題を解決したことにはならない。
なぜなら、事後的な再分配政策だけでは、賃金格差を生んでいる原因を是正することはできないからだ。
格差の原因を直さない限り、いつになっても同じような再分配政策から脱却できない。
したがって、賃金格差問題については、その原因を正しく把握し、対策を講じる必要がある。
以下では、賃金格差がどのような原因で生じているのか、それを是正するにはどのような措置が必要なのかを考えることとしよう。
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