このモデルにしたがって理論値を計算すると、図表4のようになる。ここでaとしては、全産業の労働分配率の値0.538(図表1参照)を用いた。
理論値は、実際の賃金の傾向をかなりよく説明している。
つまり、資本装備率の差が賃金格差をもたらすと考えてよいことになる。
ただし、詳しく見ると、資本金5000万円未満の企業につき、現実値は理論値より小さめになる。
これは、このサイズの企業では、労働組合が組織されておらず、交渉力が乏しいためかもしれない。そうであれば、政策的に介入の余地がある。
原因と結果を取り違えてはならない
賃金格差が生じる原因として、しばしば非正規労働者の存在が指摘される。「非正規労働者が多いから、賃金が低くなる」という意見だ。
表面的には確かにそのとおりなのだが、これは、原因と結果を取り違えた議論だ。
因果関係としては、零細企業では、生産性が低いために非正規労働者に頼らざるをえないのだ。
だから、「同一労働、同一賃金」を導入し、非正規労働者の労働条件を正規並みにしたとしても、問題は解決できない。そうすれば、非正規労働が削減されるだけの結果にしかならない。
また、賃金格差を解消するために最低賃金を引き上げるべきだと言われることがある。
しかし、そうしたところで問題の解決にはならない。雇用が縮小するだけのことだ。
低賃金を生み出している原因を解決しない限り、いかに労働規制で対処しても、問題は解決されない。
中小零細企業の賃金を大企業並みに引き上げるためには、中小零細企業の資本装備率を高める必要がある。
そのために、中小零細企業に対する政策融資措置が必要だ。
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