法人企業統計調査(金融業、保険業以外の業種)によって、2020年度における企業規模別の賃金(従業員一人あたりの給与・賞与の合計)を見ると、図表1のとおりだ。
(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
資本金10億円以上の企業(「大企業」と呼ぶ)の賃金は575万円であり、資本金1000万円未満の企業(「零細企業」と呼ぶ)の236万円の2.4倍にもなる。
日本の高度成長期において、「二重構造」ということが言われた。経済成長を牽引する製造業の大企業と、中小零細企業や農業との間で、生産性や賃金に大きな格差があるという問題だ。
日本経済は、現在でもこれと同じような問題を抱えていることになる。
賃金格差の原因は、資本装備率の差
上記のような賃金格差の原因としてまず考えられるのは、分配率(付加価値に占める賃金の比率)だ。そこで分配率を企業規模別に見ると、図表1のw/v欄に示すとおりだ。
分配率は、むしろ大企業の場合に低い。したがって、分配率の差が賃金格差の原因とは考えられない。
ただし、零細企業の分配率は低い。これについては後述する。
賃金格差の原因として第2に考えられるのは、資本装備率の差だ。ここで、「資本装備率」とは、従業員一人あたりの有形固定資産だ(なお、法人企業統計調査は、これを「労働装備率」と称している)。
この値は、大企業が2887万円であるのに対して、零細企業では790万円と、大企業の3.7分の1でしかない。
このように、資本装備率において、企業規模別に顕著な差があり、大企業が高く、零細企業が低い。
これが賃金格差の基本的な原因と考えられる。
法人企業全体での有形固定資本は490兆円だ。そのうち43.6%を占める213兆円が、従業員数では全体の18.6%でしかない大企業に保有されているのである。
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