しかし、世界が注目する経済学者のミノーシュ・シャフィクは、人生にもっとも大きな影響を与えるのは、「社会契約」だという。私たち人間がつくった社会契約は、私たち人間がつくりかえることができるはずだ。今回、『21世紀の社会契約』から、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
運命を左右する「もっと大きな力」
社会とは、すべてである。私たちの多くは、1人で生まれて1人で生きているようなつもりで日々を過ごしている。自分の運命は両親のおかげだと(あるいは、両親のせいだと)思っている人もいるかもしれない。
だが、運命を左右するもっと大きな力について、私たちはほとんど考えることがない。
それはたとえば、私たちがたまたま生を受けることになった国であり、歴史上のある瞬間に流布していた社会としての態度であり、経済や政治をつかさどる制度であり、そして、まったくの偶然による運不運だ。
こうしたより大きな要因が、私たちが住む社会の姿を決定する。それらは、私たち人間がどんな経験をするかを左右する、もっとも重要なファクターだ。
社会がどのように構築されているかは、そこで生きる人々の生活に、そして彼らが出会う機会のあり方に、深い影響を与えてきた。それは人々の物理的状況のみならず、幸福度や人間関係、そして人生の見通しをも左右する。
社会の構造を決定するのは、政治や法のシステムなどの制度、経済、さらには家庭や共同体の生活がいかに組織されているかだ。
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