就職「新」氷河期--親も知らない就活の真実
厳選採用とは、自社の採用基準を満たす学生が集まり切らなければ、計画数に届かなくても採用活動を終えることをいう。大企業ともなると数十人単位で“余り”を出す。中小企業でも同様だ。中途採用の一般化もあって、新卒採用へのこだわりは薄れている。景気がやや改善した11年採用でも、計画と実績との乖離は続き、表面倍率より厳しい現実が学生を追い詰めたと見られる。
かみ合わない需給 大量無就業の戦慄
厳選化は、教育と経済の構造変化がもたらした今日的現象だ。
まず、大学が増え、大学生が増えた。大学は20年で5割増えた。大学進学率は50%を超えた。大学まで出たんだし、就職はしたい--。学生は有名企業目がけ、片っ端からエントリー(応募者登録)していく。
一方で、企業を取り巻く競争は激化した。世界で戦える会社になりたい。快活で指導力があって、英語も堪能な学生が欲しい--。ただ、今はゆとり教育世代、ゲーム世代。推薦やAO入試で入学した学生も多い。学力や社会性の見極めに苦慮した末、若手社員をリクルーターとして動員。上位校の生徒だけに早くから何度も接触し、内々定を出す。これらは“狩り”“握り”と呼ばれ、かつての指定校制度を彷彿とさせる。
「誰しもにチャンスがあるという平等思想は幻想にすぎない。現実に存在するのは、就活格差だ」(就職情報企業HRプロの寺澤康介社長)。
10月、3年生たちの就活が始まった。超円高が日本に濃い影を落とす中でのスタートだ。
この春の大学卒業者のうち、約2割の11万人弱は就職も進学もしなかった。史上最悪に近い水準に逆戻りだ。うち9万人はアルバイトもしない“無業者”。彼らも就職をあきらめてはいない。内定獲得レースへの参加者はたぶん、想像以上に多い。
学生たちは就職塾に駆け込み、焦れる親たちは説明会や面接にも出張って行く。書き込みサイトに躍る虚実ないまぜの就活体験を、血まなこになって読みあさる。これがリアルな就活の実態だ。われわれはそれを、新たな氷河期と呼ぶ。
『週刊東洋経済』2010年11月13日創刊記念号(2010年11月8日発売)では、就活の真実に迫った。
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