それがわかって、ただちに交際を終了させたという。
「そんな兄弟がいる人と結婚して、将来的に弟さんにお金の無心をされたら嫌じゃないですか。今は親御さんのお金で暮らしているみたいですけど、親は先立つもの。ウチは3姉妹で3人ともキチンと大学を卒業して、ちゃんと就職をして働いている。誰にも迷惑をかけずに自立して生きています。それが人としての正しいあり方じゃないですか?」
きみえが言うことは、正論だ。ただ、誰もがそんなテストの模範解答のような生き方ができているわけではない。引きこもった人には、そうならざるをえない理由があったのだろうし、心に闇を抱えて、必死で生き方を模索している人たちもいる。
今は、かつて引きこもりだった人がネット上で素晴らしい作品を発表して、一躍脚光を浴びる時代だ。一方で、つまずくことなく高学歴で社会に出て、そこで初めて挫折を味わって心が折れ、精神を病んでしまう人たちだっている。
私は、きみえに言った。
「きみえさんの親御さんは今はお元気だし、姉妹もしっかり働いていると思うけれど、この先の人生、何が起こるかわからないですよね。親兄弟が困ったときに助け合うのが家族じゃないですか。結婚したらパートナーの親御さんや兄弟も家族になるし、何があっても助けてあげる。パートナーを信頼していたら、どんなご兄弟がいても関係ない気がしますよ」
すると、きみえは不満げに言った。
「そうですか。それってきれいごとだと思います。お見合いって条件ありきの出会いなのだから、最初から問題をかかえている親族のいる人とは、結婚したくない。わざわざ面倒なことを背負い込むことはない気がします。恋愛で好きになってしまったのなら、しかたないですけど」
好きになってしまったら仕方ないけれど…
“好きになってしまったのなら仕方ない“。結局、そこに尽きるのだろう。
例えば、生活圏内で出会って、好きになった後に年収が思いのほか低いことがわかっても、「私もがんばって働けばいいや」と思える。問題を抱える兄弟がいても、相当な事情がなければ、それを理由に結婚を取りやめることはないだろう。
ところが、プロフィールから入るお見合いでは、年収の低い人をそもそも選ばないし、親族に何か問題がある人も選ぼうとしない。お見合いを申し込まれてもお断りで返す。
「もちろん、ご自身の結婚ですから、条件でどうしても譲れない部分ってあると思うんですね。ただ条件にこだわっている人は、婚活で結婚していくのは難しいですよ」と伝えると、彼女は「入会はもう少し考えます」と言って、帰っていった。
しんすけ(42歳、仮名)は、お見合い活動を始めて半年。大手メーカーに勤務し、年収は800万を越えている。お見合いは組めるのだが、交際になって一、二度お会いすると、お相手からお断りがくることが多かった。
「やっぱり自分に恋愛経験が少ないから、うまく女性をリードできないのが原因なのでしょうか」
そう言うしんすけに、私は、こうアドバイスした。
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