じつは、前型のノア/ヴォクシーも完成度の高いミニバンとして今なお印象に残る。乗り心地がとてもよく、また運転も楽しめ、なおかつ乗降しやすい低い床構造など、全方位で5ナンバーミニバンをひとつの完成形に近づけた商品性を備えていた。それらがどこまで深みを増したか、新型ノア/ヴォクシーの試乗が楽しみだ。
以上のような基本的な価値に加え、新型ノア/ヴォクシーの3本の柱のなかに、使い勝手のさらなる向上や先進技術、動力性能などに注目すべき点がある。
ひとつは、後ろのドアからの乗降に際して、スライドドアの開閉に合わせ自動的にステップが手前へせり出す機構が設けられたことだ。これは、高齢者向けとしてダイハツが「タント」のために開発したステップに似ている。新型ノア/ヴォクシーではそれだけでなく、後席への乗降の助けとなる長い手すりをBピラーと呼ぶ支柱に設けている。これもタントで採用されたものに通じる。
ダイハツがトヨタの100%傘下という資本関係だけでなく、乗員すべてに配慮したクルマ作りの考えを共有している様子を思わせる。
先進安全技術では、一般的な運転支援にあたるトヨタセーフティセンスに加え、飛び出し事故予防のため路上駐車するクルマなどに近づきすぎないようにする運転支援や、パワースライドドア装着車に、後続車の接近など危険を予知してドアを開けるのを中断するなどの機能が設けられた。そのほか、トヨタチームメイトと称して、自動車専用道路での渋滞時(0~約40km/h)の運転支援や、スマートフォンを使って入庫と出庫をリモート操作する機能などが盛り込まれている。
より電動化を意識したハイブリッドシステムの採用
動力に関しては、新世代ハイブリッドシステムについて、ハイブリッド車(HV)専用コンパクトカーであるアクアに通じるような、モーター走行部分を加えたシリーズパラレルハイブリッドを搭載したという。詳細は試乗をしてみないと不明だが、これまでトヨタは初代プリウス以降ハイブリッドシステムについて、THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)という名称を使ってきたが、シリーズハイブリッドとしてのモーター走行を重視した作動への転換を進めているのではないか。
競合といえる日産「セレナ」は、シリーズハイブリッドであるe-POWERの導入により、モーター走行による滑らかで静粛な走りを特徴とし、住宅地などでの外出や帰宅に際し近隣への騒音に配慮できるようにしている。競合に負けない商品性の獲得という点で、目配りの行き届いたトヨタの開発には感心されるところである。
前型でひとつの完成形と思わせた5ナンバーミニバンの価値を、大きく前進させ、かつ進化させたといえそうな新型ノア/ヴォクシーの発表である。
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