加藤:今回の質問者の方は週1という話だけど、コンテンツをレギュラーで続けていくうえで、テレビ番組の作り方を参考にできることって、他にもある? たとえば「○○という番組のこの方法を使ってみたら」みたいな。
角田:それなら、新聞の「ラテ欄(ラジオ・テレビ欄)」ってあるじゃないですか。あの番組表を会議ではずっと見てた。番組名の隣に視聴率が書いてあるわけよ。
加藤:プロ用だね。
角田:それを「日報」って言うんだけど、会議前にそれを配って、みんな見てるのね。視聴率が良かった番組名を赤く塗ったりしたりして。それを見ると、「あ、いまマツコ・デラックスさんって本当に人気なんだね」とかってわかるわけじゃない。そうすると「うちの番組ではマツコさんで何をやろうか」「うちの番組にはマツコさんは出れないから、それなら新しい人を発掘しようか」みたいなことを考え始めるわけだよ。
つまり、流行ってるものからどう敷衍(ふえん)して企画を作っていこうか考える時には、「一個をパクる」だとなかなか難しいんだよ。だから、なんとなくマップ的に「今世間では何が来てるのか」を掴むためにテレビ欄を使ってた、いい意味で言うとね。悪い意味で言うと、「テレビで流行ってるもの、何?」になっちゃうわけだから、テレビがどんどん袋小路に入っている、タコつぼ化している問題点でもあると思うけどね。
裏側を見せる勇気も必要
加藤:メーカーの人にありがちなことは、商品の「完成形」を見せたいじゃないですか。けれどテレビってわりとメイキングやプロセスを画にするじゃん。その辺のやり口に関して何かありますか?
角田:質問者の方のメーカーの詳細がわからないから安直には言えないんだけど、本当はメーカーさんもプロセスを見せたほうがいいと思うんですよ。「この商品ができた時に、こんなところを苦労しました」ってことを、彼らは隠しがちだよね。
加藤:はいはい、わかります。
角田:できあがった商品のできあがった能力だけを語りがちなの。でも、それって『プロジェクトX』的な視点から言うと、もったいない。「こんなに苦労したから」ってところにこそストーリーがあるわけじゃんか。
それで言う「苦労」って、べつに技術開発だけじゃなくて、「A部長とB部長が滅茶苦茶もめた」とか、実はそっちのほうが面白いじゃないですか。そういうことって、メーカーさんはまあ言わないけれど、でも本当は言えるようになったほうが、メーカーさんのプロダクツが売れることとコンテンツの面白さがくっつく。法律に違反するようなことじゃなかったら、もうちょっと開示したほうが面白くなるんじゃないかな、と思ってるな。
加藤:その意味では、この『仕事人生あんちょこ辞典』にも、「ルサンチマンはエンドロールで解消される」って話が書いてあるじゃない。
角田:映画や番組の最後に、スタッフの名前がばーっと流れるやつですね。
加藤:逆に言うと、「商品の○○ストーリー」みたいなものが語られる時、出てくる人が少ないなあと思ってるんです。たとえば、そういう意味での「エンドロール」を一回作ってみて、それをじーっと眺めてみると、「あ、この人」ってネタが見つかるかも。主役・脇役に限らず人はいっぱいいるわけだからさ。
角田:なるほどね! ハリウッドのエンドロールって滅茶苦茶長いじゃん。あの名前の一人一人に「お前、どこに関わって、どこが苦労したの?」って毎回聞いていくだけで、1000回分くらいのレギュラー番組になるよね。