「企画を量産できる人」はこんな風に発想している 「裏側を見せる」「世の中とどう接続させるか」

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加藤:そうそう! おそらく商品のガワを見てる人が多いんだけど、実は商品の中身やプロセスについての話、つまり「ナラティブ」もある。だからネタは角田君が言うように世の中=外にもあるし、いま話したように中にもある。それをリストアップしてみるだけでも、ネタに溢れて「うわー、週1って年に52回しかないっすね!」ってことになったり、「じゃあ毎週2つやります!」みたいになったりできるよね。

企画の良し悪しを自分だけで判断しない

角田:そうなると、「リストアップの仕方にいい考具」ってあるんですか? 

加藤:まず、「いいものだけをリストアップしない、出さない」ってことですね。

角田:おお、深い!

加藤:まずは全部書く。めんどくさいけど。

角田:そうか、いい悪いは判断しないで全部書くのね。加藤君、昔からそれやってるよね。すごく時間がかかるから、周りの友人達はめんどくさいんですよ。でも、たしかにそれは大事だよね。

加藤:要は「価値判断を後にする」のが大事なんです。

角田:それはさっき僕が言ったテレビ欄の話と一緒だ。いい悪いは後にして、まずは全部見るの。

加藤:企画担当をされている方は、おそらく「ブレインストーミングの4つの原則」というものをご覧になったことがあると思います。あれの最初に「批判厳禁」って日本語で書いてあるんですけど、正確に言うとちょっと訳の間違いがある。本来は「批判してもいいけれど、後でね」ってことなんです。

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角田:なるほど。最初に批判されたら引っ込めちゃうもんね。

加藤:それをデザインシンキングで有名な米IDEO社さんは「Defer Judgment」って云い換えているんですよ。deferって「後にする」とか「持ち越す」って意味ね。

これが結構難しくて、自分が書いたりタイプしたりするものって、くだらないアイデアをタイプしてると悲しい気分になるので、その場で「ああ、これはいいや」って、捨てたくなっちゃう。でも「うおー、くだらねー!」って言いながら打ち、「くだらねーつまんねー」と言いながらも、いっぱい書き出して、その後で「いいのあるかな?」って探す。そうやって作業のステップを変えるだけでも、意外にいいアイデアってあるんじゃないかな。

角田:うん、あるよ。つまり、その「つまらない」ってこと自体に、僕は面白くなっちゃう。

加藤:それもあるし、自分でネタを判断するのって結構怖いんだよ。自分が「面白いな」と思うものが会議ではスルーされたりとか、自分では「紙の無駄で、もうゴメンナサイ」ってアイデアが滅茶苦茶ウケたりって、プロの世界でもあるよね。だから、自分ひとりだけで候補を出して、自分ひとりだけで選んじゃったものをその後で人に見せるのは、実は機会損失になっている。

角田:もったいない。

加藤:どうせ書くなら、恥ずかしいけれど全部書いて、皆で見て、いいのだけを選ぶ。その時には「ダメなアイデア」はなぜダメかを詰めなくてもいいよね。ダメなものも多いけれど、それには触れない。

角田:貶さないんだね。

加藤:いいのだけをピックアップすれば誰も傷つかないので、いいアイデアが意外にいっぱいあるかもね。

角田:「ネタ、結構あるじゃん」って思うだけで、担当者の方のプレッシャーも減りますよね。そうすると、面白い方向にどんどん回っていくかもね。(構成:岡本拓)

角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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加藤 昌治 作家/広告会社勤務

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かとう・まさはる / MASAHARU KATO

作家・広告会社勤務。千葉県立千葉高等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス)、『発想法の使い方』(日経文庫)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス)などがある。

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