共感しにくい構図…どうする?
それにしても、なぜNHK大阪がこういう思いきったキャスティングを試してみたのか、というのがとても気になります。米国のテレビ局の戦略的思考で考えれば、「男性視聴者と外国人視聴者の獲得」ですが、そこにフォーカスすると、「あまちゃん」をきっかけに順調に増えてきた女性視聴者を失うリスクもあります。
米国のテレビ局(制作会社)のキャスティング方針というのは、とてもはっきりしていて、マス市場を狙うのか、コア市場を狙うのかで、主役群がまったく違った人種構成になります。できるだけ広く狙うと、主役・準主役に、白人、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系が全部キャスティングされます。白人は白人に、アジア系はアジア系に、と同じ人種の登場人物に共感するからです。米ABCの「グレイズ・アナトミー」や「LOST」はこの方式で視聴者を獲得し、成功しました。反対にコア層を狙うアフリカ系専門チャンネルのドラマでは、主役・準主役にアフリカ系俳優がキャスティングされます。
男性、外国人という新たな視聴者を狙っても、朝ドラの主たる顧客はやはり女性。しかし「マッサン」は今のところ、「あまちゃん」をきっかけに朝ドラを見始めた女性視聴者には、共感しにくい構図になっているなというのが正直な感想です。
「マッサン」で亀山エリー役を演じるシャーロット・ケイト・フォックスさんは、お人形さんのように美しいし、ひたむきな演技もうまい。彼女の容姿を見るためだけに「マッサン」を見ている人もいるそうです。日本語はまったくできなかったそうですが、一生懸命学んでいるのがうかがえて、好感が持てます。
しかし、女性視聴者から見れば、亀山エリーは、あまりに遠い存在。美人で、お金持ちで、性格がよくて、努力家で、外国人。しかも日本食まで作ってしまうスーパー主婦。何もかも完璧で非の打ちどころがない。「うちにもこんなヨメがいたら」と思いながら見るシニア視聴者はいるでしょうが、20代から40代の女性視聴者はエリーに共感するのは難しいのではないでしょうか。
かといって、ほかの登場人物を見てみても、マッサンは男性だし、政春とエリーの結婚を反対する母親の亀山早苗(泉ピン子)や、政春の婚約者だった田中優子(相武紗季)は、エリーをいじめる役なので、そこに共感するのは難しい。日本人女性が外国人女性をいじめるという構図も、見ていて気持ちがいいものではありません。
さー、困った。今後、「花子とアン」の葉山蓮子のような波瀾万丈な日本人の友人が出て来ないかしら……。と期待しながら、しばらく見守っていこうと思います。
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