男性主役というだけでも「懸け」なのに、ヒロインは外国人女性。白人の女性が主役級を務めるというのは、国内で制作される地上波連続ドラマとしては初めてではないでしょうか。
通常、日本のドラマや音楽番組で外国人が登場すると、そこだけ視聴率が下がる傾向があるため、外国人をキャスティングするときは、とても気を遣います。視聴率では測れない価値があるかどうかが問われるからです。特に音楽番組ではそれが顕著で、洋楽アーティストの歌の部分だけ、カクッと視聴率が下がるのを筆者は何度も見てきました。それはおそらくドラマでも同じ。民放ドラマで韓国人の女優や男優を主役級でキャスティングした連続ドラマもありましたが、視聴率では苦戦していた記憶があります。
なぜドラマに外国人が登場すると、視聴率が下がってしまうのか。ひとつは、やはり日本人視聴者は日本人の主役じゃないと共感しにくいこと。そしてもうひとつが、外国人俳優が日本語でせりふを言うと、どんなに演技がすばらしくてもたどたどしい日本語になり、視聴者がそっちに気をとられてしまうこと。すると「言葉」ばかりが気になりはじめ、物語に入っていけなくなってしまう。そのうち「そこまでしてカタコト日本語のドラマを見なくてもいいか」となるのです。
カタコト英語に厳しいハリウッド
米国のドラマでも、海外マーケットに放送権やDVD化権などを売ることを目的に、米国外で有名な俳優をキャスティングすることはあります。
米ABCのドラマ「LOST」(2004~2010年放送)には日本人代表で真田広之さん、韓国人代表でキム・ユンジンさんが出演していますが、これも日本や韓国のマーケットを想定してのこと。しかし、おふたりを見ればわかるとおり、外国人俳優は英語がネイティブ(あるいはネイティブに近いこと)が大前提。英語がたどたどしいとストーリーの流れを阻害してしまうからです。ある日本人の女優は、日本でのプロモーション目的でハリウッドのドラマに出演することは決まったものの、英語が話せないと判断され、「言葉そのものが話せない役」にキャスティングされました。
その厳しい世界に比べれば、NHK「マッサン」のスタッフはせりふを大きく削ることもしていないし、視聴者も苦情を言ったりはしていない様子。日本人は日本語が話せない外国人俳優に対してとても温かいなと感じます。
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