「円安なら株価が上がる」は本当か まじめに「円安と株価の関係」を考えてみた

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そして、個別銘柄のリスクよりも為替の動向は読みやすい。なぜなら、為替には明らかなモーメンタムがあり、いったん円高方向にすすむトレンドができれば、ある程度は継続することはわかっているからだ。

もう一つは均衡レートの読み誤り、ということがある。そもそも、金融市場ではファンダメンタルズによる均衡レートを期待することそのものが間違ってはいるのだが、そうだとしても、均衡レートが120円にあると考え続けたのは間違っている。実体経済からの均衡レートは、85円から95円というのが妥当な推測だ。現在110円へ向かおうとしているのは、異常な金融緩和によるものであり、いまこそ実体経済から見た均衡レートからは外れる動きをしている。

「円安歓迎の上場企業」のファンダメンタルズは改善

さて、本題は、なぜ円安になると日本経済にプラスになるのか、ということであった。モノを手に入れるためのおカネの価値が下がるのであるから、日本国民は不幸になるということであった。そして、為替レートの一時的な変動は、実体経済における企業などの行動にひずみをもたらすということがわかった。

しかし、均衡レートを超えて円安になることで、経済が良くなることは絶対あり得ない。均衡から外れること自体が不幸であるし、しかも、それが自国のおカネの価値を下げ、土地のドルベースの価格を下げ、企業の時価総額を下げ、日経平均のドル建ての価格を下げることになるから、何もいいことがあるはずがなかった。

円安により、世界経済における日本の存在感も価値も大きく低下したのである。中国にGDPで抜かれて悔しがるのであれば、円高になれば、すぐに抜き返すことができるにも関わらず、悔しがった人々は、円高がそれに拍車をかけたと勘違いしていたのである。

そうなると、円安株高の理由は「ファンダメンタルズ」上はまったくなくなる、ということになる。では、なぜ、円安株高の連想ゲームはまだ続いているのであろうか。

それは、「ファンダメンタルズ」を日本経済の「ファンダメンタルズ」で考えたからだ。日本経済ではなく、日経平均株価の構成銘柄、あるいは東証1部上場企業の「ファンダメンタルズ」で考えなければならなかったのだ。企業の「ファンダメンタルズ」とは企業価値であり、企業の収益とリスクからなる。この企業収益が、円安により増えるかどうか、ということなのだ。

いまやコンセンサスとなったように、円安では輸出は伸びない。前述のポートフォリオをきちんと構築している、これらの上場大企業たちは、世界中に生産基地ポートフォリオを確立している(しつつあった。そのためには円高は割安で海外の土地や工場や企業や人々を安く雇えたのだ。もはや円安では、田中将大を買い戻すことはできない)。

だから、円高対応で、価格競争にさらされるコモディティと呼ばれる、多くの生産者が作ることができる製品は、海外へ、それも日本とは賃金が10分の1以下などの国に移したのである。なぜかテレビの生産者の一部は、これをしなかったために、大きな損出を出した。これは単なる誤りであった。

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