「円安なら株価が上がる」は本当か

まじめに「円安と株価の関係」を考えてみた

さて、円安が日本経済にプラスというのは本当だろうか。経済学で言えば、これは100%誤りである。為替レートは経済学では交易条件であり、円が強い、自国通貨が強くなれば、必ず、自国の経済厚生は高まる。

つまり、国民は幸せになるのである。なぜなら、円が強くなるということは、同じ100円でより多くのモノが手に入るということであり、食べ物も資源も衣類もすべて安く手に入るわけであるから、必ず幸せになるのである。

なぜ「円高悪玉論」は、半ば常識となったのか

しかし、円高のせいで日本経済がおかしくなっていた、という議論は、半ば常識として取り扱われてきた。これは、なぜだろうか。

もっとも一般的な解釈は、為替には均衡為替レートが存在し、市場の調整機能が十分発揮されれば、到達することになる為替レートがあるが、そこから一時的に外れると、さまざまなひずみをもたらすということである。そして、これまでは、均衡レートを上回る円高だったということだ。

つまり、たとえば、均衡為替レートが1ドル90円であったときに、78円になってしまうと、輸出企業は苦しむ。彼らが均衡為替レートを正しく認識していたとすると、78円というのは異常事態であり、いつかは均衡に戻るはずである。

均衡に戻れば、1ドル90円になれば、現在の生産工場の立地はこれでいい。日本中心でいい。だから、90円に戻るまでは、歯を食いしばってがんばり続ける。こういう意思決定をしたとすると、一時的な円高は苦痛である。

そして、一時的と思った円高が数年も継続すると、苦痛では済まなくなり、企業の危機である。需要はその数年間に他の国の生産者に取られ、まったく市場からおいていかれ、衰退してしまう。取り返しのつかない円高ということになる。一時的な円高を修正しようとしなかった日銀が悪い、という非難というか愚痴も出てくる。

しかし、これは単なる愚痴だ。行動ファイナンスの世界になれているわれわれには、とても愚かな言いわけに聞こえる。ノイズトレーダーリスクがあり、株価が均衡価格あるいはファンダメンタルズに戻ってくる保証はないから、均衡に戻るというナイーブな信念で、投資戦略を立てる愚か者はいない。実体経済においても、証券投資と同じく、ポートフォリオを組むべきなのだ。

すなわち、世界に生産ネットワークを構築し、一時的に円高で日本での生産がコスト上不利になった場合には、その期間は、米国工場の生産を100から150に増やし、欧州工場の生産を50から80に増やし、日本工場の生産を200から120に抑える、というような対応を取るべきなのだ。

そういうことができるのは大企業だけだ、と言われそうだが、グローバル経済で生きていく以上、一点集中で勝負するのは、全財産を個別株1銘柄だけに集中させるのと同じくらい危険なことなのだ。

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