「円安なら株価が上がる」は本当か まじめに「円安と株価の関係」を考えてみた

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これは前述の経済学が述べたとおりで、交易条件の悪化が、いわゆる経済厚生の水準を低下させるというモノで、企業部門に限ってもマイナスだったのだ(消費者は100%マイナスであるから、日本経済全体ではそれ以上のマイナスだが、ここでは関係ない)。

しかし、前述の「第二のメカニズム」=子会社効果は大きなプラスで、これを加えると、トータルでプラスになるという分析だった。だから、円安で株高になるのは正しい、という議論であった。

円安による株高は長続きしない

これは何を意味するか。実態ベース、実質ベースでは、日本企業、上場企業に限っても大きなマイナスであることを示している。なぜなら、子会社の利益は円換算にした場合にプラスとなるだけで、ドルベースで考えると不変だからだ。

そして、実体経済ベースではマイナスなのだから、これは実質ベースで考えれば、上場企業にとってすら大きなマイナスなのだ。なぜなら、もはや海外企業を買収しようにもより多くの円が必要になり、海外企業にとっては、より少ないドルや元で日本企業や人材や土地を買うことができるからだ。

こうなると、やはりファンダメンタルズで考えると、円安株高というのはごく短期の会計上の利益改善に着目した動きということになる。ファンダメンタルズ的に言えば、持続はしないということになる。

実際、円安がすすんでも株高にならない場合が、最近は散見されるようになってきた。そのときの市場のムード次第、仕掛ける側の都合次第で、円安は株高につながったり、つながらなかったりするようになっている。

意外と市場もファンダメンタルズに近づいていると言えるかもしれない。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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