実は、ドル円が、この均衡値と同じだった状況は、リーマンショックの1年前の2007年にも起きていた。つまり2007年半ばにドル円は120円前後で推移したが、現在の100円台ひとケタ後半から110円前後のドル円というレートであれば、2007年時と同様、日本の輸出企業の国際的価格競争力が戻っていることを意味する。
1ドル110円以上の円安は実現するか
2007年当時は、製造業の工場の国内回帰が進んだが、2014年の後半以降も現在のドル円が続くなら、今後は同様に、国内回帰の動きがいずれ出てくるということである。
メディアでは「2007年当時は円安バブルだった」、などの見方が根強いようだ。だが冷静にみれば、当時も、購買力平価が示す均衡値にドル円が落ち着いただけだったのだ。日本の有力企業が一定の価格競争力を保っていた為替水準だったわけで、「円安バブル」とは言い難い。この均衡水準に、自国通貨が一定期間落ち着くことを通じて、日本の輸出企業の価格競争力は本当に高まるのだが、実際には2007年は、日本銀行が性急に利上げを続けたこともあり、均衡水準のドル円相場は長続きしなかった。
昨年のアベノミクス発動で、ドル円は再び購買力平価が示す均衡値まで戻り、そして9月になってからは、この水準よりも円安方向に動き始めた。
こうした円安は、日本銀行よりも先に米FRBが政策金利引き上げに動く環境では、十分説明できる。1ドル110円を突破してさらに円安が進むかどうかは、2015年にFRBの利上げがスムーズに始まるかどうか次第だろう。そうした中では、日本銀行が2015年に量的緩和を継続するだけで、円安が続きうることになる。
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