人材の複雑方程式 守島基博著

人材の複雑方程式 守島基博著

本書の帯に「日本企業はなぜ人が育たないのか」と書かれている。この「育たない」問題を複数のキーワードから解き明かしていくプロセスが面白く、発見が多い。

20年前には存在しなかった現象(多数の非正規社員など)が、現代の職場には存在している。またいろいろな常識が横行している。

たとえばコンプライアンスやワーク・ライフ・バランスだ。

いずれも「推進しなければならない良いこと」と信じられているが、守島氏によればどちらも「行き過ぎ」ではないかと問題を提起している。

コンプライアンスは「法令順守」を意味するが、現在では「内部統制」の色合いが強くなっている。いまの会社は規制だらけだ。個人情報保護法令によって、パソコンやデータを家に持ち帰れない。明日までに仕上げなくてはならない仕事を会社でやろうとしても、残業時間規制がある。

会食についても「だれ」「いくら」「食事の内容(店)」まで細かく規制されている。メールについても記録がチェックされている。新卒採用で人事は「求む、型破り人材」と言うが、こんな規制の中では誰も型を破れない。

守島氏は、こうした仕組みは経営者が従業員を信頼していないと受け取られやすいと説く。そのとおりだろう。またルールに従うことに慣れると、「ルールに従うこと自体が目的になり、自律的に考えることをやめてしまう」とも言う。

こういう負の結果を招かないための処方箋も提示されている。コンプライアンス経営の原則と理念を経営者と従業員が共有し、ある程度の柔軟性を許容することだ。またパートタイム従業員の意見を取り入れることも有益だ。

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