人材の複雑方程式 守島基博著
ワーク・ライフ・バランスについても「行き過ぎ」がある。本書では「3つの誤解」と書いている。まず「みんながワークとライフをバランスさせなければならない」と思い込んでいること。
しかし「みんな」がそうしなくてはならない必然性はない。どうバランスさせるかは個人が選択することだが、「みんなが家族と子どもとたくさんの時間を過ごさなければならない」という風潮がある。これは誤解だ。
次に「ワーク・ライフ・バランスは働き方の変革を引き起こす」という誤解がある。
働く人が私生活を充実させると労働が効率化され、長時間労働がなくなり、もっと人間的な生活ができる、というワーク・ライフ・バランス論に対し、守島氏は「ワーク・ライフ・バランスは結果であって原因ではない」と言う。
つまり働き方が効率化され、長時間労働がなくなることでワーク・ライフ・バランスという結果になると言うのだ。
3番目の誤解は「ワーク・ライフ・バランスは企業の競争力を向上させる」というものだ。これからの人材獲得大競争時代を乗り切るためには、ワーク・ライフ・バランスによる採用力の向上が必要という論理だ。
一理ある。ただし守島氏によればそういう見方は狭く、ワーク・ライフ・バランスで採用しても、競争力に結び付けるには人材育成、配置、評価・処遇という人材活用の仕組みが大きく影響すると述べている。
当たり前のことだが、会社の中で人を元気づけるのは仕事そのものなのだ。