景気は欧米発で二番底も、高めの成長期待は危険
EUの91の金融機関を対象としたストレステストが終わった。ネガティブなケースの下で6%の中核的な自己資本を達成できないのは7行だけ、17行がボーダーライン上とされた。市場は落ち着いているが、ストレステストが評価されたわけではまったくない。
ソブリンのデフォルトリスクを織り込んでいないことや銀行の貸倒損失の算定根拠の甘さなどが問題点として指摘されているが、それよりも、「向こう1年半という短期間の景気シナリオで金融システムへの影響をテストしても、そもそも意味がない。欧州は日本のように時間をかけて処理することを選択しているのだから」とクレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは言う。1990年代の日本の不良債権問題の例を見ても、バブル後のバランスシート調整には時間がかかる。
悪材料のダブルパンチ
レバレッジを金融機関から国家財政が肩代わりしたにもかかわらず、「過去3年行われてきた銀行のバランスシートの清算は不十分」(国際金融安定性報告書=GFSR=7月のアップデート)だ。欧州経済は、国家財政と金融システムの2つのリスクが相互に悪い作用を及ぼすリスクを抱えたまま進む。
米国も同じだ。7月21日、1930年代以来の金融規制の大転換となるウォールストリート改革・消費者保護法(ドッド−フランク法)がオバマ大統領のサインで成立した。
だが、ファニーメイとフレディマックの住宅金融公社(GSE)2社の改革は盛り込まれなかった。米住宅ローンの大半を保証し続け、政府による事実上の無制限の資本注入を受け続けて、資本注入額は2社の累計で1450億ドルに上る。不良資産の実際の額ははっきりしない。6月に上場廃止され、今後の改革に市場の注目が集まっているが、「大きすぎて潰せない」の最たるものである2社を今後どう扱うのか、解決策は容易に出ないだろう。