景気は欧米発で二番底も、高めの成長期待は危険

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断ち切れぬ悪循環の輪

民主党は「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げて20年度までの平均値で名目成長率3%超、実質成長率2%超を目指している。参議院選挙で躍進したみんなの党は、規制改革と日銀にインフレターゲットを導入させることなどにより名目4%以上の成長を掲げている。

だが、多くのエコノミストは日本の潜在成長率を0・5%程度と見ている。頑張っても名目1%成長、高くても2%が限度、という答えが返ってくる。みんなの党の「政府がカネを集めて再配分するのではなく徹底した規制改革、海外での企業の後押しをする」という主張にはうなずけるが、日銀が追加緩和策を行っても効果は限られるのではないか。おそらく日本でデフレといわれているものの正体は、日銀の白川総裁が主張するように貨幣的現象ではないからだ。

景気がよくないから財政出動を続けるべきとの意見も増えてくるだろう。ただ、財政出動の乗数効果についてはエコノミストの間でも意見が分かれる。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日本は、民間経済への公的介入が増え、マクロ安定化政策の長期化・固定化が続き、経済の新陳代謝を阻害し、潜在成長率を下げる“悪い金利安定化”へ進んでいる可能性が高い」と指摘する。

供給過剰→賃金デフレ→需要低下の悪循環の輪が断ち切れない。企業は設備投資を行わず、貯蓄を増やし、それが家計の貯蓄とともに、財政出動をファイナンスする構造が固定化している。公的保証や補助金のバラマキで産業構造の転換が進まず、利益が上がらないので、賃金も上がらないという姿だ。

少しでも成長性を高めるための新たな産業を支援する制度上の工夫は必要だが、効果のないバラマキや特定の業界を利してきた補助金などの効果の薄いものは削る必要がある。高めの成長を前提とし、財政再建を遅らせることは危険である。かえって、悪い構造をますます長期化させてしまうおそれがある。

(シニアライター:大崎明子 =週刊東洋経済2010年8月7日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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