景気は欧米発で二番底も、高めの成長期待は危険
市場は米国の住宅市場や雇用の状況がよくないことから、「二番底」を懸念している。ドッド−フランク法が成立した21日、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が米国経済の先行きについて「異例なほど不確か」(unusually uncer−tain)と証言したものの、追加緩和策は出なかった。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「バーナンキ議長はカードがないとは言えないので三つの追加緩和策を挙げているが、実施の可能性は五分五分。たとえそのうちの一つ、“時間軸の強化”を行っても効果はあまりなく、手詰まり」と見る。「下振れリスクを抱えながら、景気は一段、高度が下がった状態で動く」(上野氏)。
昨年には景気急回復の中で、選挙対策のポピュリズムも加わって、金融政策の出口を語り、金融規制の強化を叫んでいた欧米の政治家のマインドも今春以降は急転換した。
米国の規制改革議論においては、当初、大手金融機関の業務や規模を制限するボルカー・ルールが衝撃を与えた。国際的な銀行に対する資本規制であるBIS新規制(バーゼル規制)が打ち出した、資本の質と強化は邦銀を大いに悩ませた。だが、いずれも、導入段階では部分的な適用除外やグランドファーザリング(旧基準の扱いを一定期間容認)、段階的施行などの手法を駆使し、景気への影響を緩和しようとしている。
今後は、減税や補助金などの欧米の景気振興策が期限切れとなり、新年度には緊縮財政に転換する。ユーロは下落を続け、相対的に競争力を増したドイツなどがギリシャを救済していく形を取らざるをえない。ユーロ下落の一方、米ドルも経済指標の下振れリスクやヘッドラインリスクが出るたびに、売られやすくなる。頼みの綱は中国などBRICsの成長を当て込んだ輸出だが、これも、中国の引き締め政策による減速もあり、限度がある。
欧米ともリーマンショックのような金融システム危機の誘発だけは避けようとしながらも、金融政策、財政政策とも手詰まりで動く。必然的に銀行のバランスシートに大きな不安を抱えていない日本は、円高圧力を受けざるをえない。そうなると金融政策の追加緩和、財政再建棚上げ論が台頭するだろう。
菅直人政権が続投するのか、民主党政権の行方次第の面もあるが、秋には円安効果を狙って、「日銀に対し長期国債買い取りの圧力が強まるだろう」と、野村証券の木内登英チーフエコノミストは見る。