英語が下手な人は「主語の大切さ」がわかってない 「単語の置き換え」を始めると必ず行き詰まる

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さらに、「源氏物語」の古典的英訳Arthur WaleyのThe Tale of Genjiを見ると、この部分の訳は次のようになっています。前半の主語sheと後半の主語the Emperorがしっかり現れています。そればかりでなく、出だしの部分、「宮仕え」を主語として独立させています。

Thus her position at Court, preponderant though it was, exposed her to constant jealousy and ill will; and soon, worn out with petty vexations, she fell into a decline, growing very melancholy and retiring frequently to her home. But the Emperor, so far from wearying of her now that she was no longer well or gay, grew every day more tender, and paid not the smallest heed to those who reproved him, till his conduct became the talk of all the land……(The Tale of Genji, vol.1, The Charles E, Tuttle Company, Inc., 1973, 4th printing, p.7.)

英語は必ず主語があり、しかも何でも主語になると言いましたが、英語から日本語にする場合、この主語の扱いがなかなかむずかしいものです。いちいち日本語に訳すと、いかにも直訳、という感じになります。そういう訳し方をされると辟易してしまいます。

人称代名詞を「彼が」「彼女が」「彼らが」とするのはまだいいとして、二人称のyouを「あなたが」「あなたたちが」と連発すると、相手によっては大変失礼になります。少なくとも目上の人には、そうは言わないのではないでしょうか。

そういうときは「源氏物語」のように、原則として主語は言わないことです。言う必要がある場合は、大勢の人に対しては「皆様が」というでしょうし、地位のある人であれば、さらに丁寧に敬語を使って話しかける心得が必要です。それが日本語の文化というものでしょう。

英語では人称代名詞を中心に考えるとうまくいく

逆に英語では、このwe、you、theyなどの人称代名詞を中心に考えているとうまくいきます。例えば「わが社の昨年の売上は100億を超えた」と言いたいとき、そのまま訳すと、

Sales of our company exceeded……

あるいは、

Our sales came to (amounted to) more than……

となりますが、これは、

We did more than ten billion in sales last year。

と言えば(did …… in salesはsoldでもいいわけですが)、もっといきいきと聞こえます。our companyよりもwe、salesという名詞よりも動詞でdidあるいはsoldの方がいきいきした表現になるということです。

英語ではとにかく主語を何にするか、何でスタートするか、がカギです。何でも主語になりますから、主語の選び方ひとつで文が決まります。うまく言えなかったら、まず主語を変えてみることです。その点でwe、you、theyなどの人称代名詞は主語の原点と言っていいでしょう。

主語ひとつにしても日本語と英語はこんなに違うわけで、何もかもが異なる言語なのです。

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