英語が下手な人は「主語の大切さ」がわかってない 「単語の置き換え」を始めると必ず行き詰まる
さらに、「源氏物語」の古典的英訳Arthur WaleyのThe Tale of Genjiを見ると、この部分の訳は次のようになっています。前半の主語sheと後半の主語the Emperorがしっかり現れています。そればかりでなく、出だしの部分、「宮仕え」を主語として独立させています。
英語は必ず主語があり、しかも何でも主語になると言いましたが、英語から日本語にする場合、この主語の扱いがなかなかむずかしいものです。いちいち日本語に訳すと、いかにも直訳、という感じになります。そういう訳し方をされると辟易してしまいます。
人称代名詞を「彼が」「彼女が」「彼らが」とするのはまだいいとして、二人称のyouを「あなたが」「あなたたちが」と連発すると、相手によっては大変失礼になります。少なくとも目上の人には、そうは言わないのではないでしょうか。
そういうときは「源氏物語」のように、原則として主語は言わないことです。言う必要がある場合は、大勢の人に対しては「皆様が」というでしょうし、地位のある人であれば、さらに丁寧に敬語を使って話しかける心得が必要です。それが日本語の文化というものでしょう。
英語では人称代名詞を中心に考えるとうまくいく
逆に英語では、このwe、you、theyなどの人称代名詞を中心に考えているとうまくいきます。例えば「わが社の昨年の売上は100億を超えた」と言いたいとき、そのまま訳すと、
Sales of our company exceeded……
あるいは、
Our sales came to (amounted to) more than……
となりますが、これは、
We did more than ten billion in sales last year。
と言えば(did …… in salesはsoldでもいいわけですが)、もっといきいきと聞こえます。our companyよりもwe、salesという名詞よりも動詞でdidあるいはsoldの方がいきいきした表現になるということです。
英語ではとにかく主語を何にするか、何でスタートするか、がカギです。何でも主語になりますから、主語の選び方ひとつで文が決まります。うまく言えなかったら、まず主語を変えてみることです。その点でwe、you、theyなどの人称代名詞は主語の原点と言っていいでしょう。
主語ひとつにしても日本語と英語はこんなに違うわけで、何もかもが異なる言語なのです。
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