英語が下手な人は「主語の大切さ」がわかってない 「単語の置き換え」を始めると必ず行き詰まる

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単語を置き換えるのはa word processorですが、私たちは意味を伝えるa communicatorでなくてはなりません。この「切り換え」のプロセスを、通訳する場合を参考に図にしてみると次のようになります。

(出所:『伝わる英語表現法』)

(※外部配信先では図をすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

この図は、まず聴き取ったこと(listening comprehension)はいったん「情報」として整理し、それを改めて英語で伝える(communicate)ということを示しています。ここには「訳す」というステップがありません。実はこのプロセス全体が「訳す」ことであり、「訳す」ことの本来あるべき姿であるはずです。

訳すとは「単語の置き換え」ではなく「伝える」こと

ここまでの話では「訳す」という言葉を「単語の置き換え」という意味で使ってきましたが、「訳す」ことは、本来「伝える」ことでなければならないのです。

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まず聴き取りで、意味の把握と整理を行いますが、そのためには「視覚化」が必要です。「視覚化」というのは、日本語は抽象的・あいまいなので、いつも意識して、具体的に理解しようと努めることです。つまり、先ほど述べたように“What's he saying?”“What's she saying?”と、たえず心の中で問いつづけることです。時間の関係、場所や位置の関係の把握などもこれに含まれます。文脈、状況が見えている必要があります。

こうして「情報」(言うべき、伝えるべきこと)に整理できたところで、日本語から英語への切り換えを行います。発信する段階では、メッセージの内容を英語で表現しますが、そこでのポイントは「伝える」努力です。

そのためには、まず伝える相手のことを考えなければなりません。当然、相手は日本人ではありません。英語ですから具体的で説明的な表現を求めています。したがって、むずかしい単語をふりまわさないで、やさしい言葉、シンプルな表現に徹します。

長部 三郎 通訳者

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おさべ さぶろう / Saburo Osabe

1934年新潟県長岡市生まれ。1959年東京大学教養学科(国際関係論)卒業、アメリカ国務省言語部勤務(日本語通訳担当)、日本ペンクラブ事務局長などを経て、桐蔭横浜大学工学部教授などを歴任

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